276 ─五月、薔薇の木の下で。
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────……君も俺をひとりにするんじゃないか。
[棘のある恨み言を呟く
彼が与えたものが俺にそうさせた。
この声が違う形として発されたと、気づかない。]
[薔薇の花なんて大嫌いだ。
何もせず佇むだけでいつまでも美しくいられる。
俺の欲しいものを、掴んで離さない。
いつもいつも、心の奥で嫉妬し続けていた。
俺は花になんてなれない。
踏み躙られ、嘲笑の中何もできず汚され
見限られて引き抜かれるのが似合う雑草。]*
[君が俺を受け入れて手を伸ばさなければ
こんな気持ちにならなかっただろう。
作品を貰うより、隣にいてくれるほうが好き。
……欲望を受け入れられるより、隣に、
分からないなりに何かが変わったことを感じる
どうしてこんな俺を置いていくのか、と。
まるで子供のようだった。]
[地上で虚しく跳ねる魚は
ひとりでは、何処にも行けない。]**
[ 声が届く。
今まで聞こえていたものとは違う、声。
拗ねた声()のような。
それよりももっと棘のある()ような。
嗚呼、そうか。
つまり彼は奪えたのだろう。
無理やりにでも、強引にでも手に入れたいと思っていた、ものを。 ]
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[ 彼の根っこの部分>>23 実を割って仲間を覗けたら良いのに。 透けない心の中身は判らない。 ]
見せてくれないものは、見えませんよ。 盲目である内は何も映さないよう。 だから、ちゃんと見れる人は……見るべきだって。
[ あいしてる。五文字の呪文。 呪いのような単語の持つ意味は判らない。 その答えを口には出来なかった。 それにきっと、自分じゃ意味なんてないと思った。 ]
(27) 2018/05/21(Mon) 01時半頃
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[ いらない笑顔に遠回しな言葉>>24 困ったように笑ってしまった。 ]
放ったらかしにして枯れさせる後悔をするくらいなら 水をやり過ぎて枯らす方がマシに思えたので。
[ 回りくどい台詞を返して背を向けた。 ]
(28) 2018/05/21(Mon) 01時半頃
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ヴェルツせんぱいの代わりはいないじゃないですか。 せんぱいを見てくれる人だって きっと、……いるから。……それじゃ。
[ 言い捨てるよう立ち去った。 背後に声>>25を聞きながら。
泣くように笑っているような、 そんな気がしたのは、気のせいだ。 ]*
(29) 2018/05/21(Mon) 01時半頃
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―廊下―
[ 後輩のヒューと同室のモリス。 彼らに訪れる災いはまだ知らず。 談話室に向かう足元は一度止めたもの、続く。
招く声>>8 誘われる脚>>18 沈むソファ。 ]
――――……。
[ 無意識に唇を親指で撫でたのは、――>>19 ]**
(30) 2018/05/21(Mon) 01時半頃
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[ ぞわぞわと、心の奥が痒くなった。
掻き毟ってしまいたかったけれど、今その体力はないし。
いや、わかっていたから先に掻き毟ったのか。
薔薇――自分自身――を。
あまりにも可笑しくて、おかしくて。
零れたのは、笑い声だった。
やはり喜ばしい日だ。喜ばずしてどうする。
互いが求めるものを見つけられたのなら。
こんなにも素晴らしい時があろうか。 ]
[君達は俺の知らないところで全てを進めた。
俺は本当に何もかも知りはしない
来てはならなかったなんて、分からない。
笑い声が仮に届いたとして、それだけで誰なのかなど
何を考えているのかなど、察せない。]**
[ 手を伸ばしたって今は何にも届かず、――()。 ]
[ 見つかったのが、諦めたように手を降ろしてからでよかった。
この手を無意味に、出来て、――よかった。 ]
おはよ、いっちゃん。
お目覚めはいかが?
[ 困ったように、笑いかける。
その声は、音は、薔薇の香りを連れるようにして届く。
傷だらけの手を――隠せるわけもないのに――隠そうとした。
だってもしこの手が無意味じゃ無くなってしまったら。 ]
[ ―――きっともう、笑っていられなくなるから。 ]**
[ 廊下からもう一度、 動けなくなった月を見上げ、
そのまま視線を落としたなら、
溺れる程の赤が 広がっている。
…… かち、 と金属音を立て、 窓を開けた。
染まるほどの赤い香りのなか、 赤泥の中に、
また、ひとを認めたなら 何時かの己を思い立ち、]
──── 惑わない、では 無かったな。
[ 特別堕ち易かっただけだ。
──── 己、が。
忘れられざる少年時代を、思い出しやすくもあり
……顎を引っ掴んで向かせるほどの、欲は無くとも
燻る熱は 常にあったのだと、思い起こす。
誰にだって有るものだろう、
言葉にならない心の最奥が、]
──── なあ、 ………
[ 其処にいる彼等の名は呼ばずとも*]
[ ざわざわと、風もないのに薔薇の木々が囁く。
その声は聖書の一節を落とした相手のもの。
──惑わない、でもない。
ロジェのように、小夜啼鳥のように
囁き返すこともできないで、いる。 ]**
っ、 え
これ、なに、何のこと……俺、寝てなんていない
[その声も咽返る芳香と発せられる。
放たれる薔薇の香りに乗せて届く音に
具体的な何かを理解出来たわけじゃないが
相手と自分への違和感だけは、認識した。]
[傷だらけの手が痛ましい
……でも、いつからそうだった?
きっと気づこうともしていなかった。
そうしたのは、誰?
怯えて動けない癖に、晒したくないものを抱えている癖に
見てほしいなどと自分勝手なことを想ったのは。
自分の傷ばかり見つめる奴が
他人のそれを癒せるわけがない。]
誰…………?
[短く混じった囁くような声
──いつも聞いていた、ような。
弱った子供のような戸惑いの問いに、返る音はあったかどうか。]**
[ 誰も俺なんて見ていない。
この瞳がみていたものだって、きっと。
俺を通した、別のなにかだったんだろう? ]
この声が聴こえるのは、薔薇に呪われた奴だけ。
欲望や、奪ってでも手に入れたい想いがある奴だけ。
モリスもそうだし、……さっきのも。
まあ、誰とはいわねーけどさ。
[ なぁ、と()聞こえた声の主の名を謂うことはなかったけれど。 ]
モリスは想いを遂げたからね。
疲れて寝ちゃったんでしょ、きっと。
大丈夫。朝になれば起きるよ。
そんで、きっと、いっちゃんの傍にいてくれる。
[ 来るかもわからない朝は、きっといつか来る。
その時傍にいるのは、咲きもしない薔薇なんかじゃない。
夜が明けたあと、横にいるのはきっと《いつも》の。 ]
[ 自分でもわかるほど、薔薇の匂いが濃く、なる。 ]
───俺の勘違い、だったんだな。
[ こんなに必死になってくれる姿は
たぶん、俺のためなんかじゃなのに。
恥ずかしいと思うより、傷ついたこの手より。
空っぽのはずの場所が、今更────痛い。 ]*
[ 絵画のような風景だけを見つめ続け
庇護する腕に、欲望をぶつける
どちらに対しても残酷な仕打ちだ。 ]
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