276 ─五月、薔薇の木の下で。
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[ 水飛沫など聴こえない。 薔薇の薫りも何もかも。
一層、壊してしまえたら 一層、壊れてしまえば、 めちゃくちゃにされて めちゃくちゃにできれば――なんて
思考の渦に溺れそうになる足は人の脚。 結局、何者にもなれない唯の人。 ]
(38) 2018/05/17(Thu) 03時頃
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[ 子どもにも大人にもなり切れない蛹。 ただ、綺麗なものだと思っているのなら 思い違いだろう。
そんなに白くなどないのだ>>0:404 実際の所は、諦めて目を背けているのは 煤で汚れた自分の手を見たくないだけ。
するりと掌に差し込まれた指>>0:409 小柄な彼の小さくて細いゆび。 彼の腹の色など分からない。 ]
(39) 2018/05/17(Thu) 03時頃
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[ だが求めたのは気紛れの悪ではなくて、 昇華できない澱みの誤魔化し方。 血の契約のない内緒事は、 その時だけ確かに忘れさせてくれる。
「放課後、東屋の倉庫で」>>0:410 ]
――約束。誰にも、言わないよ。
[ 合言葉は自分にとっての秘密を1つ 打ち明けること。
逢う魔が時の間だけ、 何もかも、棄てられた。 ]
(40) 2018/05/17(Thu) 03時頃
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[ だが夜の静けさは駄目だ。 一人でいると様々な事を考えてしまう。 耳を塞ぎたくなるような後悔ばかり。
そんな時に助けてくれた上級生は、 事情を知らない癖に味方だと言ってくれた>>0:413 彼はできた人≠ネのだろう。 だが、誰も望んでいないのに彼はまるで 他人事でないように言葉を操った。 ]
(41) 2018/05/17(Thu) 03時頃
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( それは誰の話?>>0:415 )
[ 思ったもの口にはしなかった。 ただ、腕を伸ばして指の先が届けば 同じように撫でた。 似通った糸を引いた気がした。 それだけの理由。 その行為が意味する事なんて言葉にせず。 ]
(42) 2018/05/17(Thu) 03時頃
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それじゃあきっと、 どこにいたって同じなんだ。
[ そう返して口角を上げた。 でもその言葉に偽りなど一切なかった。 嘘をつくのも繕うのも苦手だったから。
ただ、望んだように何事もなかったかのように 接する事の出来るその人が自分とは違う 世界にいるのだと感じただけ。 ]
(43) 2018/05/17(Thu) 03時頃
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[ 結局そのまま自室について毛布に包まりながら 嫌気がさしてしまう。 一層、夢を見ながら朽ちていけたらいいのに。 あの花のように。 寝台につきながら思うのはいつも同じ事。 ]
(44) 2018/05/17(Thu) 03時頃
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―自室―
[ 結局あの後、調理室に向かわず自室に戻った。 自室には非常食のビスケットがあるし、 不戦勝という事で勝負は見逃してもらおうと考えたからだ。
まさか同じような事を考えているとは知らず>>26 ビスケットを所持品に加えていれば 開きっぱなしのノートと赤いペンを見つけた。 思い出したサイン>>0:410 何事かだけ書き足して、折り畳んだ。 ]**
(45) 2018/05/17(Thu) 03時頃
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──そうそう、もうひとつ。
薔薇には毒があるからね。
気をつけな?
[ 甘い、あまあい囁きが落ちるのは
離れるよりも、ほんの少し前。
それは一瞬のことで
およそ避ける暇も無かったろう。
囁く耳元に押し当てるのは、薄い唇。
きっとそれは、呪いのような薔薇の棘。 ]**
フェルゼは、ユージンの育てた花のことをふと思い出す。
2018/05/17(Thu) 12時頃
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[ ベネットに会いに食堂に戻るかと考えた。 だが、ひとりになるとやはりだめだった。 ノートの切れ端に赤いペンで綴る。
「かみさまなんて信じていない。」
秘密足り得るものなのかは分からない。 頭の中に浮かんだのはいつかの母の言葉。 フェルゼには姉以外にもきょうだいがいるらしい、と。 母と父が零していた事を思い出した。 その頃から姉以外の家族に対して 裏切られたような心地を覚え、 また顔も知らぬきょうだいに怯えた。 ]
(68) 2018/05/17(Thu) 12時半頃
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フェルゼは、その子も音楽をしているらしい。
2018/05/17(Thu) 12時半頃
フェルゼは、二人の話しによると瞳の色は奇遇にもベネットに似ていて。
2018/05/17(Thu) 12時半頃
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―自室→オスカーの部屋―
…………ベネットは関係ないのに。
[ そうは思いながらも手はヴァイオリンケースを持っていた。 彼にあげるためのビスケットも手提げ鞄の中、忍び込ませつつ。 中庭の東屋に向かう途中、紙の切れ端を オスカーの部屋の扉の隙間>>61に挟んだ。 ]
(69) 2018/05/17(Thu) 12時半頃
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――→東屋
[ 気晴らしにと選んだ方法は二つ。 ヴァイオリンと友人へ相談。 果たすために向かったのは東屋。 そうして東屋へたどり着いた時 ]
の姿を見つけて首を傾げた。
……マーク?
[ なんだかぼんやりしているように見えたから。 つられたように視線を向けた先は 月の霜に照らされた薔薇の木。 彼に飾られたものと同じ花。 ]**
(70) 2018/05/17(Thu) 12時半頃
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フェルゼは、メアリー(マーク)はこれを見ていたのだろうか。**
2018/05/17(Thu) 12時半頃
[ 気を抜けばくらりと酔いそうなほどの、薔薇の香り。 ]
[ 濃醇なそれを、今はまだ隣席から香るものと、認識したまま。 ]
[ 掠め逝く薔薇の香は、
大事な血管の上に、 ちぃさな棘を残し、
気を付けるもなにも、
─── 寧ろ 甘受するかのよう。 ]
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[ 薔薇の薫りが夜風に混じる。 くんっ、と鼻を鳴らしながらも待っていれば 何処か機嫌の悪そうなマークがいた>>87 ]
今日は違うよ。 たまたまここに来た。 でも、夜も遅いのに一人で寝ているようなら 何かあったのかと思って。
[ ケースを見せればここにきた理由の説明になるだろうか。 見せながらもあの時、謝れていない事も 頭の片隅には浮かぶが、言葉を付け足す。 ]
(89) 2018/05/17(Thu) 21時半頃
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最初から君を小さくて可愛い女の子だとは思ってないよ。 それに構っていたのだって、君の見た目 を揶揄っていたつもりじゃない。
君は俺に構われるの、……いや?
[ 何処か眠たそうな眼差し。 月光が照らすまだ丸みの残る頬を見やりながら、問うた。 ]*
(91) 2018/05/17(Thu) 21時半頃
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[ 弾ける炭酸の上に、浮かぶ薔薇。
濃く、色濃く、それは香る。
別の何かからかもしれない。
そして隣の男()からのものでもある。 ]
あ、どこに挟まってたのかね。
食用にも使う薔薇だし、そんまま食えるし。
彩りいいから、まあどーぞ?
待たせたお詫び?
[ コトリ、と。
薔薇の浮かぶサイダーが置かれる。
その水は、その蜜は。
きっと甘く、きっとちくりと痛い。
悪魔が呪いに使う、薔薇の棘のように。 ]
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[ 突っ撥ねる様は拗ねてるようにも見える。 別に普段と変わらないような気もしたが それでも放っておく気は湧かなかった。 言葉を重ねば見開く瞳>>97 「なんで」が何処に続くは察せられない。 だが、言いそびれた1つを口にした。 ]
マークは、いつも一生懸命だから。 その時、その時を懸命に生きる所がいつも 花に似ていて、……綺麗だと思ってるよ。
[ そして自分にはないものだ。 聞こえた呟き>>98に目線を合わすよう しゃがみこんだ。 遠回しの言葉に許しを得たと決め込んだから。 ]
(103) 2018/05/17(Thu) 22時頃
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[ 腕を伸ばし頭を撫でてみようとした。 触れた所で彼のようにはなれないのに。 ]
どんな格好をしたってマークはマークだよ。 [ それがフェルゼには羨ましかった。 ]*
(104) 2018/05/17(Thu) 22時頃
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[ 主の身体の一部を、口に運ぶ。
食む、食むと租借は繰り返される。
しっとりとしたレーズンより強く
甘い薔薇の香りが、狂わせるように噎せ返り
動かぬ月が不気味に見下ろしている。
嗚呼。
こんな夜。
美しく咲く《花》を。 ]
[ この汚い手で触れ
この汚い指先で咲かせ
この汚い心で濡らし
この汚い唇で吸い上げ ]
[グラスのサイダーで口を湿せば、それは薔薇の蜜のよう。
濃密に甘くて、脳を痺れさせるような。
もう、隣人の香気だけではないとわかっていても、おかしいと思うには遅すぎた。
月は明るく。
《花》は鮮やかに。]
[ 悪魔の口から零れ落ちる甘美な詞。
誰も知らない。
この穢れた手が何のために花を咲かせるかを。
好きだから?
そんな簡単な理由じゃない。
花は美しく咲き。
散るよりも、枯れるよりも前に。
この手で手折るために。 ]
………なんて、モリスは考えたことない?
[ 射干玉の黒い点が、モリスを見る。
甘い毒を嚥下する喉()に、視線を這わせ。 ]
例えばだけどさ。
こうやってパンを食うみたいに。
誰かの喉に唇を這わせてみたいとか。
奪いたいとか。
壊したいとか。
[ フ、と。
いつもと変わらぬ──けれどいつもとは違う──表情で
帽子の鍔に触れて、笑った。 ]
[ 小夜啼鳥の囁きは、呪いの接吻を甘受した者へも
それは音のない、凪いだ風に乗り。
或いはざわざわと囁く、中庭の薔薇の音となり。
耳をすませば、すまさなくても。
きっと嫌にも、届くだろう。 ]
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