82 謝肉祭の聖なる贄
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[不意に自分の現在の毛並みを思い出して]
………ああ、あの贄は要らんとは言ったが。
一口くらい味見はしてみても良いだろうか。
[あまり好みではないと言っても、少しでも食べれば毛並みが元に戻らないだろうかーーと]
味見か。
断らずとも誰も咎めはせぬが。
好きにすれば良かろう。
[一番乗り気なのは茶色の輩のようでもあったが、ぽつりと横から口を挟んだ。]
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……わかりません。
[銀灰の大神様の膝の上に招かれてすぐの事。
酒気の混じった吐息を漏らしながら。 喰べる準備といわんばかりに自分の身体をあれこれ探る大神様は。 頬を伝う涙に気づいたらしく。その理由を問うのだが。
当人すらも初めてで、理解出来ない想いをどういえばいいのか。 泣きながら、首を横に振る。]
……胸が痛くて、苦しいです。
[それをいうのが精一杯だった。]
(12) 2012/03/14(Wed) 22時半頃
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………良いと思うよ?
もともとみんなで食べちゃうつもりだったんだから、さ。
[ちいさな白金の主からは、咎める言葉は出てこなかった。]
味見、だけだぜ?
喉仏食いちぎるのと心の臓とは、やっぱり公平に決めねぇとな。
[どっちにしろ最後には皆で喰らう事に異存はないが、一応クギを刺しておく。]
ではとっととくじで決めろ。
我は如何様にも構わぬ。
[ふんと鼻を鳴らした。]
[銀灰、白金の声に続き、茶の同胞が念を押すように言うのが聞こえれば]
ふむ。その辺りまでは要らん。
もとより私が未成熟な餌はあまり好まぬ事は知っているだろう?
まあ、腸なり胃の腑なり一口二口程度貰えれば十分だ。
[取り出すのは多少歪んだ六面の賽ふたつ。
数年前に喰らった奴の手首の骨で作ったものだ。]
じゃ、目のデカイ奴が勝ちなー。
[空の盃へと、二つの賽を放り込んだ。
2・5]
[冷厳に端正に振舞うこの大神が、いざ神饌の供物を喰らう段には淫らに狂乱する事――長い付き合いであれば数え切れぬほど目にしたことであろう。
輩とひとつ贄を分け合う為にそれを抑えるが故の、「どうでもいい」であり「何でも構わぬ」のだと――知れるだろうか。]
[長い指で賽を摘み上げると、面白くもなさそうに放り投げた。
賽は2と5の目を上にして止まった。]
あぁ……うん、公平に。判ってる。
[茶色の主がクギを刺したのは直接自分に対してではなかったとは思えど、
声は自然に、か細い声として紡がれていた。
やがてこの白金が振ることとなった賽の目は、16]
[賽を振る3頭の同胞を眺める。
己は先ほどの宣言通り、賽を振るつもりはない]
………茶のは、ずいぶんと贄に懐かれたようだな。
[その声音に隠る色は、羨望か哀れみか、それとも他の何かか]
…こういう場合はどうするのだ。
[じろりと茶色の輩を睨む。]
まぁねぇ…。
[白の御大の言葉に、ニヤニヤとしながら。]
何でぇ、どれも足して7かよ。
振り直し、かね?
[振られた賽の目を見て渋い顔。
もう一度とばかりに白い賽子を転がした。
32]
[もう一度賽を振るのを見れば、眉顰め]
……致し方なし。
[再度賽を投げる。11 ]
……………… こういうことも、あるんだね ……。
[振り直しとの言葉に、今一度、白金は賽を振り直す。
此度出てきた目は1、2]
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[瞳の奥まで覗き込むかのように見つめる大神様は。 自分を一体どう思っているのだろう。
喰べる為だけの贄なのに。 何故、その苦痛を取り除く提案などを。 それを告げる声は春のそよ風の様に甘く優しい。 睦言を交わしているのかと勘違いしそうなまでに。
しかし、違うのだろう。 興を殺ぐような我侭な贄など喰う価値もない。 そういうことなのだと思い直す。]
(26) 2012/03/14(Wed) 23時半頃
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じゃ、俺からな!
[うきうきと上機嫌に宣言し、支度の整った幼い贄を見る。
まぁ、全て食い尽くすつもりはない。
極上のところを戴いて、後は分け合って食べる気ではいる。]
……………おめで、と。茶色さま。
[己の二番乗りをさとった小さな大神は、息つきながら小さく囁いた。
一番乗りをうらやむような、上機嫌さをうらやむような。
そんな不思議な声色は、どこか控えめな声色で。]
……好きにしろ。
[冷たく言い捨てる。
血肉を前にすれば、この冷たいポーカーフェイスも崩れるのだろうが。]
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……違います。
[膝から自分を下ろし。 近い未来に起こる現実を語る大神様に。 畏れ多いと思いつつも、そう叫ぶ。
自分は彼の提案を飲むという逃げ道を。 選べる者ではない。 でもせめて、誰に喰われるかは選びたかった。 所詮餌でしかないのだが、叶うならば。]
私をあなたの血肉にしてください。 すべて残さず、喰らい尽くしてください。 ……それが私の望みです。
[後から後から流れ落ちる涙を拭うことも忘れ。 熱に浮かされたかのように、そういった。]
(32) 2012/03/15(Thu) 00時頃
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フッフッフ……実に愉しそうだ。
[上機嫌に宣言する茶の同胞と、それまでの銀灰と白金を交えたやり取りとを眺めていた灰白は、人間たちに向ける事のない笑い声をこぼす。
それは、年若い者に対する微笑ましく思ってのものだろうか]
クラリッサは、銀灰の大神様に深く頭を垂れた。**
2012/03/15(Thu) 00時半頃
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[>>35銀灰の大神様の言葉に。深く頭を垂れながら。 彼の為に出来ることはそれしかないのだと思い知る。
ならば、祭の続く間は。 他の贄や大神様にこの命を奪われないように。 自分で自分を守っていくしかないのだろう。
ひとり取り残され、心細くはあったが。 >>40気になる言葉を残して舞う褐色の青年を見た。**]
(63) 2012/03/15(Thu) 08時半頃
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今年のも、中々旨いぜ?
食いに来いよ!
[臆面もなく呼び掛けて誘う。]
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[褐色の青年と銀灰の大神様との対峙に漂う空気は。 触れたら切れそうな刃物のような緊張感があり。 他の贄と大神様たちとのものとどことなく違う。
茶色の大神様の名を。 漏れ聞こえた言葉から、成り行きを理解する。
自分たちが摘み取る果実のひとつひとつに名があり。 果実がその名を告げて、自分の名を問うてきたら。 果たして、それに答えようと思うだろうか。
青年は茶色の大神様とそんなやり取りをしたのだろう。 ただ身を投げ出すだけの自分とは違うのかと驚くばかり。]
(72) 2012/03/15(Thu) 15時頃
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……あっ。
[褐色の青年は、自宅で湯浴みをしていた時。 突然現れた訪問者であるのを思い出す。 手おけを額に直撃したはずだったが。 そのダメージはすでに回復しているのか。 怪我した様子は微塵もなかった。]
……謝らないと。
[次に言葉を交わせるのはいつかはわからないが。 お互いに生きているうちには、そうしたい。**]
(75) 2012/03/15(Thu) 15時半頃
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あー!おいしいー……
[まるですっかりはしゃぎはじめた様子で、小さな大神は吠えたのだった。]
[ハ、とうっすら開いた口からかすかな吐息が洩れる。
銀灰色のからだから漂う甘く鋭い冬の香の体臭に、花蜜の如く甘く酸い、ねっとりと重い香が加わる。
それは、大神にしか分からぬほどのかすかなもので。
銀灰の発情した香、なのだった。]
[白い貌に嵌った薄色の眸は、水銀のごと煌めいて蕩けている。]
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