56 いつか、どこかで――狼と弓のワルツ――
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おい、どうした。
何があったんだ!
答えろ!おい!!
[いくら話しかけても、もう、何も聞こえない。]
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[見間違いじゃないかと、思った。
ようやく決まった赤騎士副団長が、穏やかに笑っていた青年が、倒れたのが。だから、確認する為に、前線へと駆ける]
……イアンさんっ、オスカー!!!!!
(5) 2011/07/02(Sat) 01時頃
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――…ッ馬鹿!んなよわっちい声で鳴くんじゃねえよ!
[彼の瞳を視ることは、叶わなかった。
雪崩れ落ちた自分へ、敵兵は容赦無く剣を、槍を繰り出した。
無情にも、彼のか細い声だけが響き渡る。]
[自分の所為で、彼が死ぬなんて冗談でも笑えなかった。]
…ッんで、
俺を、
[涙を流すわけにはいかない。
視界が歪めば、その場で息絶える。]
[俺は、夢の続きなんて信じない。
死ねば、何もかも朽ち果てて終わり。
だから、二度と会うことなんて、出来なくなる。]
分かってんの、かよ… !!
[神様の存在も、
夢の続きがあることも、
ベネットの声が、段々小さくなることも]
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―砦:地下牢近く―
[やがて、女性が呼んだ看護士たちが駆けつけたが。>>7 その時にはもう……]
『……………。』
[看護士が脈を取るが、既に二人とも手遅れであるのは明白で。涙を零しながら、彼らは召された魂への祈りを捧げた]
『……何故。一体誰が……』
[ぽつりと漏らされた、独り言。 まだ犯人がいるかもしれない。]
(11) 2011/07/02(Sat) 01時半頃
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[俺だって、『ありがとう』って言いたかったんだ。]
―――…ベネット。
[彼の言葉を、信じてみたくなった。]
[搾り出すような狼の囁きは、意識を手放す彼に 届いたか**]
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あ……
[背に矢が刺さった青年。 その矢は、真っ直ぐに心臓の位置を貫いていて。 近づかなくても、命が失われているのがわかったけれども。]
………イアンさん。
[守るように動いたって、守るべき“彼”は既にいないのに。>>12 それはあまりに…たまに見た、彼が振るう剣とは違って頼りなげに見えて]
…………、
(13) 2011/07/02(Sat) 02時頃
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赤騎士団団長!しっかりなさって下さい!!!!
倒れた方は、私たちが助けますから!!!!!
[もう助けられないことなんて、わかってる。 しかし。戦場では、倒れた友を置いて、先に進まなければならない時がある。騎士達が前へ進めるよう、倒れた者を救うために、衛生兵は存在する。だからそれは、意地のようなものだった]
ベネットさんを…砦まで、運びます…!
[例え命が失われていても。このまま血と土のにおいの戦場に置いていくのは、いたたまれなかった**]
(14) 2011/07/02(Sat) 02時頃
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おい、どこに居る。
治療を手伝っているのか?
[己とは違う戦場で、忙しさのあまり返事が出来ないのだろうと思いたかった。
苦手だったあの格好をした神父の姿を探す。]
[バーナードと話している間、表には出さずにムパムピスへ必死に声を掛け続けていた。]
なんで、だよ……。嘘だろ。
死んだとか許さねぇ。
何で此処に居るお前が先に殺されるんだよ。
先に逝くのは俺の方だろ?
なぁ、おい。
返事しろよぉぉぉ!!!
[しかし――いくら叫んでも、返事が聞こえることはなかった。]
還るぞ。
[血で染まる大地に横たわる狼に小さく鳴いて。
血に汚れた手袋を外し、その狼の頬と額を撫でてやる。]
[目の前が赤に染まる。
頬と額を撫でられ、どこか穏やかな気分になる が]
俺は、…
ッ ――――――… !!!!!
[続きの言葉を紡ぐ代わりに、
出てきたのは、怒りとも、悲しさとも、形容しがたい咆哮。]
落ち着け。
[ベネットの死を前にして、自身を乱している様に見えるイアンにも、ベネットと同じように安心させるように頬に触れて。
続く彼の咆哮は、ひどく胸に響いた。]
…ああ。
[咆哮は収まり、息を大きく吐き出す。
赤みを帯びた瞳が、ブラウンに戻っていく。
それは静かに、静かに怒りを胸の内に溜め込むように。]
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[イアンが浮かべた笑みに、少し安心したような、まだ少し心配しているような表情になるが>>37]
……はい、任せて下さい!
[今すべきことは、ベネットを運ぶことだと言い聞かせて。 生存者優先の為、他の兵の力を借りられはしなかったが、鞄が軽くなっていたのと、ベネットが軽装備だったのが幸いし、何とか背中に背負う。]
うん、!
[オスカーに声をかけられて、強く頷くと足を速める。>>38 駆ける、というわけにはいかなかったが、砦が近づけば、手を貸してくれる者もいただろう]
(43) 2011/07/02(Sat) 14時半頃
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―砦―
[砦に着くと、ベネットの遺体を安置所まで送り届けに行く。そして、その場にいた他の看護士から、ムパムピスとフィリップの訃報を聞き、目を見開いた]
なんで……?ムパさんとフィリップは、砦の中にいたんでしょ?
『敵軍の捕虜がいたらしいの。捕らわれていたんだけど…牢が、空になってたって。その近くで、二人は倒れていたという話よ。まだ捕まっていないから、私たちも警戒の必要がある』
[もしかしたらそのまま外に逃げたかも、という同僚の言葉は既に耳に入っていなかった。時折戦場にでるフィリップとは違い、ムパムピスが自分より先に死ぬことはないだろうと思っていたのに。突然の死が、まだ信じられずにいて。
戦の無情さを改めて感じ、唇を噛んだ]
(44) 2011/07/02(Sat) 14時半頃
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[休憩をとる旨を同僚に伝え、砦の中を歩いていく。 戦の始まる前に、ムパムピスと話した事を思い出しながら。>>0:153>>0:157
――生まれ変わりが本当にあるのなら。 いつか死んでいった人たちとも、再び会える? でもムパさん。私は、戦のある世界には、生まれたくないよ。
あの時、言えなかったことを胸中で呟いた。 もし生まれ変わりがあるというなら…戦のない平和な世界。せめて、彼らがそんな国に生まれているのを願う。]
(45) 2011/07/02(Sat) 15時頃
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―礼拝堂前―
……んっ、
[つきん、と一瞬、頭に痛みが走る。奇妙な光景が頭に浮かんだ。 見た事のない景色。覚えのない、顔の見えない誰か。 騎士とは違う服。臙脂色に緑色…それと赤い…狼?
ふるりと頭を振り、押さえた。 戦の中だと、たまにそんな白昼夢?を見ることがあった。健康に異常はなかったから、殆ど気にしたことはなかったけれど。
…従軍神父のことを考えていたからだろうか。 気づけば、礼拝堂の前にいた**]
(47) 2011/07/02(Sat) 15時半頃
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