207 Werewolves of PIRATE SHIP-2-
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『ああ……美味しい』
ああ……不味い。
[重なる聲と血を啜る音。
蕩ける血の味に、爪の先まで満たされて。
今本当に人では無くなったのだと。
泣いていた赤子が笑う代わりに……何故か泣きたくなった。]
血腥い……。
[翌朝。ベッドの中にいる私を覚醒させたのは鮮やかに漂ってくる血の芳香であった。**]
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[食後のお茶、なんてものは陸に上がった時ですらしない。 食事が終われば、そのまま片付ける。
それから約束通り医務室に寄り、 ミナカがいれば手当てを頼んだ。
そんなに深くもない刀傷。 元は縫わずとも数日で治る程度のものであったが、 引っ掻き、傷を弄んだ結果はどうなっていたか。
治療が終われば、部屋に戻ってそのまま寝る。 今日は見張り当番ではない。 戦闘があった日は、さっさと寝ておく。 翌日、別の意味で修理という戦闘があるのだ。
小箱は、大工道具を入れている箱に投げておいた。**]
(9) 2014/12/11(Thu) 01時半頃
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[どこからか血の匂いがする。
淑女とのダンスでこびりついた臭いではない。
新鮮な、食欲をそそる血肉の匂い。
一体、誰の仕業か。
考える必要は、あまりなさそうではあったが。
絶望の芳香に、ひそかに、喉を鳴らす。*]
[この血生臭さに、どうしても咥内が涎で満たされる。**]
[部屋に戻る前、芳香に誘われるよう、船底の牢へ足を向けた。
引き裂かれた骸は、誰の手に依るものか。
大方の予想はつくが、無論、責めるつもりなどない。
かといって賞賛するでもない。
この捕虜が、人狼がいると騒いだとか、そんなことはどうでもいい。
身の危険など、今更なこと。
ただ、絶望の波紋が広がるさまを、この目で見に来たまでのこと。]
……いい貌だ。
[絶望の中、息絶えたであろうサイモンの顔を見て、無機質な声を零す。
絶望は畏れを産み、畏れは絶望を喰らい、成長する。
産声あげた畏れの行く末を、愉しむかのように。
ほんの微かに、唇の端が持ち上がった。*]
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[朝。 水平線に太陽が触れ、白んでいた空を染め上げる。 新しい朝だ。 絶望の船に似つかわしくないほど、清々しい。 天気だけなら、だが。
夜が明ける前には部屋を抜け出し、修理に向かう。 部屋を出る前、同室者の唸り声>>11に 煩いと言わんばかりに軽く傍の壁を蹴った。 それで壁に穴が開いたとしても、 修理するのは自分だ。何も問題ない。]
(56) 2014/12/11(Thu) 21時頃
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[道具を持って、甲板に上がる。 被害の酷いところを先にと、道具を広げた。
その為、船長からの号令の際もそこに居た。 どうしたのだろうと、のこぎりを引く手を止めた。]
(57) 2014/12/11(Thu) 21時頃
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そうだ……俺は……ヒトじゃ無くなったんだった。
[舌に食い殺した血の味が蘇る。
同時に胸を締め付けるこの感情は………。]
は、はははははっ。
もう人間じゃないのに、何、人間みたいな事思ってるんだか。
[渇いた笑いを絞り出して、最後に1つ自嘲を重ねた。]
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[それが他の用事ならば仕事を優先したが、 他ならない船長の命令だ。 広げ始めていた道具を隅へと置いた。 集まってきた奴らに蹴飛ばされたらたまったものではない。 以前大事なノミを踏んだ相手の目を 潰しかけたことがあった。 道具をきちんと管理していなかったのも悪いと 止められ、それは実行されることはなかったが。
あれは誰が止めてくれただったか。]
(79) 2014/12/11(Thu) 22時頃
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ミナカ、二人きりで話をしようか。
[私は甲板に集まった面々から嗅ぎ分けて仔犬の正体を的確に見抜いていた。なるべく穏やかに聞こえるように聲を風に乗せた。]
殺ス 殺ス カ ?
仔犬 仔犬 を
[断続的に拾っていた獣の“聲”は、
船長が云う重罪人に繋がる手掛かりとなり。
皆のざわめきに混ぜて落とした唸りに、
我知らぬまま、薄く困惑の想いが乗った。]
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[道化師が甲板に姿を見せる>>72。 途端に朝の空気が更に凍った気がした。
その笑顔の化粧の下。 表情は読み取れないが、 隣にいた下っ端の恐怖で息を飲んだ音が聞こえた。]
へぇ? ルイスね……。
[死んだのか、と口の端が上がる。
以前、大事な道具の一つを海に落としてくれた奴の名前だ。
仲間殺しは重罪。 その戒律がなければ、殺していた。
わざとではないと騒いでいたが、 わざとであったら、戒律があっても殺していたくらいだ。]
(94) 2014/12/11(Thu) 22時半頃
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そうだな、俺は仲間じゃない。
[船長の聲に静かに目を閉じる。
ヒトを、仲間を棄てたのは自分の方。
徐々にヒトで無くなっていたかも知れないが、仲間を棄てたのは
自分の意志だと自嘲を浮かべ。
やっと産声を上げ、紅いミルクを呑む事を許された赤子は死を拒む。
当然死にたくないと思う反面、殺されても仕方ないと、
むしろ死を望んだ方が良いかもしれないと思う片割れである己と。
混ざり合い、自分でも袋小路になった思考を、聲が突然
現実に引き戻した。]
……ああ。
[船長が同じ聲を持つ驚きよりも、
犯人を捜し出して殺せと命じた直後の呼び掛けられた事に驚いた。
彼には全てお見通しで、殺されるのだと怯える様に
顔を歪ませ掛けた赤子の感情を殺して、短く返す。
凪いだ波間の様に笑えていれば良いと思いながら。]
ミナカ、いつ誰がお前を仲間でないなどと言った。
[返ってきた聲にイライラと返す。]
ギリー……仔犬のことは殺さない。
私が、殺させないようにする。
[思い出した顔は、当然、血に塗れ、恐怖を張り付かせた惨たらしいものだったが。]
……船長……ど、して?
[イラついた感情が届いたのか、一瞬身を固くしかけたが。
言葉の意味を理解すると恐る恐る船長を見つめる。
思ってもいなかった言葉に、多少動揺したのか、
赤子の不安を映した瞳の色は隠せないままだったが。]
……別に。
その、お前には死んで欲しくないと思ってるだけだ。
[ミナカの視線を直視出来なくて私は顔を逸らした。]
…… あの仔、生きル
[殺しはしない、させはしない、との言葉に、
赤子の泣き声を思い出し
珍しく、感情を滲ませた。
それは殆ど独り言のようなか細い聲で。
その後のふたつの聲による会話は
実際の周囲の声や音に紛れて聞こえなくなった。*]
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ういーす。 殺し方、何でも良いんですよねー?
[船長の命>>77に、口端を上げたままそう返事をし。
昨晩縫って貰ったばかりの傷を指でなぞった。 貰った解熱剤も痛み止めも>>75、 枕代わりの布の下に溜め込んだまま。
仕事を再開する。]
(120) 2014/12/11(Thu) 23時頃
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…………。
[船長の聲も、ギリ―の聲も聴こえたが、
どんな言葉を口にすれば良いのか。
どんな表情をすれば良いのか、胸に沸くものを形にするものは
探しても見つからない。
ほんの少しだけ泣きそうな嬉しそうな、
困惑を混在させた表情のまま階下へと消える。]
私が気づいたときにはもう二人の死を揉み消すことは
叶わないくらいには人が集まっていた。
[船底についた私はミナカに話し始める。]
だからその、なんだ……泣き聲まで聞こえていたのに
事が起こるまで気付いてやれなかった私の落ち度だ。
済まなかった。
[それからおもむろに見張りをやっていた元仲間の死体の上に屈み込むと、]
……船長……あんたが…謝る必要なんて。
[紅い聲が何を語るのか、殺さないと言われても
まだ何処か不安が残っていた。
だが……初めて聞いた彼の謝罪に絶句し、
屈むその背を見つめた。]
[食い千切った肉を咀嚼し、飲み込む。]
なるほど……これは美味い。
これでは思わず粗相してしまうのも分かる。
[本当に、舌に染み渡る味に笑みが漏れたほどだ。]
…ミナカ。私達は仲間だろう?
[それは同じ船に乗っているというだけの意味ではない。
ミナカを、死神の死出の旅路に同行させてやると受け入れた時と同じ微笑みを浮かべた。]
!? ……駄目だ、あんたまで……ヒトでは無くなる。
[船の仲間であるはずの、肉塊を食い千切る姿に
慌てて駆け寄り止めようとした。
そこに恐怖も怯えも無く、ただ純粋に、彼が船を、仲間を
ヒトを裏切る事になる行為を止めたかった。]
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[のこぎりを引く音は、機嫌が良い。 小さく鳴く声>>122が耳に届き、顔を上げた。]
あ? てめーはさっさと飯でも作ってろ。
[それだけ言葉を投げ、直ぐに修理を再開した。
こことそこの修理が終われば、 次はどこだと頭の中で考える。]
(140) 2014/12/11(Thu) 23時半頃
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