194 花籠遊里
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[花の綻ぶ微笑が記憶の縁に掛かり、体温求めて月を抱いた。
気付かぬ内に蕾をつけて、知らぬ間に花弁舞わせ、 散花を知らず、四季を巡らせ年輪刻む。
そんな生き方を己は知らない。
自身は紛れもなく外の住人、境界線の向こう側に立つ。 夜な夜な翅を休めるは、飢餓を癒す為。
人の心を食い荒らす夜蛾は、やはり、蝶と似て非なる。 されどまた、―――彼も花とは似て非なる、>>151*]
(159) 2014/09/18(Thu) 22時半頃
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[存外軽い。>>160
彼を抱いた最初の感想は、そんな他愛無いものだった。 寄り添う彼は玲瓏とした月光が人の形を得たよう。
彼の双眸に映る睦まじい宵仲、花籠では極当たり前の光景。 しかし、揺れた瞳を見逃さず、白衣に包まれた背をあやす掌。]
枯花を抱かせていると俺の腕の中で言うかね。 ―――…良いさ、多少の気鬱は加糖よ。
その顔は嫌いじゃねぇ。
[移り変わる自重を支え、己の膝の上へと招き。 両の体躯は密着を成して、互いの鼓動が布地越しに接近。]
(167) 2014/09/18(Thu) 23時頃
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そう見えるかね、お前さんも捻くれたもんよ。
[彼の憂いを肌で知りながら、花の宿命に小さく鼻を鳴らした。もしも、月下に閃く蝶を知らなければ、これほどに傷付き、美しい顔貌を拝む事は終ぞなかっただろう。>>161
乾いた笑い声は、とても愉快に聞こえなかったが、咎める事はなく、そっと首筋に唇を押し当てた。 肌理を楽しみ、皮膚下に走る血管から鮮血を集めて穿つ刻印。]
………良い子だ。
[幽閉した衛星は、別の男の名を慕い、情を余所に明け渡す。 そうして幾度も切り売りしてきたのだろう心を抱いて、片手を閃かせると指先に携えるは細い帯。懐より取り出した幅の広い漆黒の一巻。]
なぁに、やがて、誰も分からなくなろうよ。 誰の手かも、誰の匂いかも、誰の唇かも。
―――解からなくなろうや。
[呪文のように唱えて、拡げた帯は彼の瞼の上へと掛かる。 視界を閉ざす黒は光を遮断し、視覚を奪う本日の趣向。 ――――――彼を一層深い夜の闇へと誘うように。]
(168) 2014/09/18(Thu) 23時頃
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[臍を曲げてしまった面持ちと皮肉は悪くない。>>173 幼子のような素直さを、長々と鑑賞していたかったが、今宵の余興に天秤は傾いて、彼の視界を黒で塗り潰す。
閉ざすための漆黒も、彼にとっては夜の色ではなく、 五指を隠す色なのかもしれないが。
捺した鬱血の色が白皙に艶やかに映え。 戯れの口付けは一度に終わらず、二度三度。 軽やかな音を態と混ぜ込み、鋭利になった聴覚すらも刺激。
膝に抱えた腰を探る指は立て圧掛け、 彼の体温に懐きながら、脇腹に繊維の一条が刻まれていく。]
―――これは、
[そうして、喜色を孕んだ声が牢に響かせ。 悪質なる低音は、彼に屈折を科す。]
(185) 2014/09/19(Fri) 00時半頃
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彼の指先。
[武骨なばかりの指は、典雅な掌とは違う。 視界を奪っても、触覚に否定させ、意識へ雑を介入させる。 忘れえぬ、真新しい夜の記憶と言う雑を。
体温は白布の袷に進入果たし、胸の尖りを掌底で轢いた。 じとりと染みる温度にも雲泥の差。夜蛾と蝶の差。>>174
更にと、指腹を躍らせ詰る乳嘴。 暗闇の向こう側に彼が何を見るかなど知りもせず、気にもせず。 空の左手は艶声に唆される風を装い、裾内へと潜入。 丸い臀部の柔さを確かめ、尻朶を掴むと、「声を」と命じた。]
……ほら、啼けよ。 鳴いて、泣いて、声も嗄れたら―――許してやらぁ。
[傲慢な声に合わせ、揺ら、と彼の股座に通した逞しい腿が前後。 縋るしか出来ぬ憐れな花を、今宵も悪趣味が染めていく。]
(186) 2014/09/19(Fri) 00時半頃
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何処が? 翅があって、花を買い、朝と共に消える。
―――…何処が違うってんだ、同じだろう。 お前の身体を過ぎていった、万人と皆同じよ。
[反芻する言葉は刃で返した。>>191 彼が苦悶に声を震わせるたび、男の笑みは深くなる。 見知らぬ男の方が体温高いという事実、肌に迫るという現実。 革越しの掌より、余程近いと言う、悲運。
彼の肌を愛でる度、心ごと抉るような言葉を吐く暴挙。 何一つ己と誰かが重ならずとも、素直な彼はきっと思い出す。 夜の向こうに揺らめく、夜蛾でない蝶の影を。
その様に、ちりりと蟀谷が焦げ付き、男は酷く興奮した。]
(198) 2014/09/19(Fri) 01時半頃
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[熟れた身体を有するのに、彼の心は気高く真情を護ろうとする。 己の甘言から、たった一つ、庇おうとするのは、 花の勤めではなく、月の気紛れでなく、人の心なのだろう。
乾いた唇を舐めて濡らすと、ささやかな抵抗を封じるように、 手首に手を掛け、艶に誘われる侭、牀榻へと押し倒した。>>192 ギシ、と鳴る木製の悲鳴が、静かな牢に零れ落ちる。]
何が違う。お前さんは花よ、花。 好きよう買われ、夜を明かせば放られる花よ。
[笑う口元は彼から伺えまい。 彼の頭上に纏めて捕まえた両手に加圧を掛け、 拒絶を―――、耳を塞ぐ事すら許さない。]
(199) 2014/09/19(Fri) 01時半頃
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[視界を奪い、自由を奪い、金子で購った月。 偽りの優しさと持ち前の毒で彼の心を暴いた後は、 まるで強姦染みた所作に切り替える。]
勘違いするんじゃねぇぞ、
[怯懦めいた色は、己の鼓膜を喜ばせ、また一時に慰撫を覚る。 泣きそうな声を撒き散らす彼に、熱くなる身体を自覚し、 とうとう、裾を払い、白い足を覗かせると開脚を強い。]
―――――お前さんじゃあ、花籠は壊せない。
[視界閉ざす帯ひとつ解けぬ無力を詰り、 男は密やかに咲いた淡月色を、灼けた楔で貫いた。*]
(200) 2014/09/19(Fri) 01時半頃
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/* シーシャさんの闇落ち…!(ガタガタガタッ)
(-102) 2014/09/19(Fri) 02時頃
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/* なんか今、唐突にヘクターの真情を理解した。 トレイルさん凄い。トレイルさんマジ凄い。
やっぱり自分は少女漫画陣営なのだ…(確信)
(-103) 2014/09/19(Fri) 02時頃
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