194 花籠遊里
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――……
[酷く強く、耳に、脳に浸透した「負の言葉」>>150 思わずぴたりとタオルに掛かる手は動きを止め、また息を吸うことさえ。
――朽ちると、ちいさくちいさく囁かれたその綴。 かの中庭の夏花のように、月光に照らしても生き返ることは無く …この花も、苗床を喪ったならば、その身を――綺麗な花弁を、ぼろぼろと零してしまうのだろうか。 其れはまるで、雫を垂らす人の様に。
されとて強い拒絶の裏、伺い見た花の顔は、「いつもの笑み」 雫の気など毛頭見せずに健気に咲く花。夜の櫻。 何処から見ても美しく、軈て散る花。刹那の夢。
ぱちり。ぱちり。 瞬きふたつ。牢に囚われた翅の代わりに狐色の睫が宙を跳ね。 枯れ朽ちるのならば水を遣ろうかと、開く唇は静かにこくりと腹へと下った。
どうせ今宵も、蝶は蜜をば吸う側、花を枯らす元なのだからと。]
(163) 2014/09/18(Thu) 23時頃
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…籠は窮屈で仕方が無いけどね。
[花が何に想いを馳せ、何を抱えるのか。 上を向いては月が煌き、下を向いては土色が咲く。 唯只管それを繰り返す真の花の気持ちなどは到底分かり兼ねるけれど ――夢物語ならば、いつかは王子が迎えに来るのに。なんて。
そうしてゆうるり再度手を動かし始めると、今度は髪先へと締めに上がる。 水分を無くした髪は、先よりかは柔らかに成っただろうか。 片手をタオルから外して見れば、その髪に触れては直に撫で――
――その際視界の隅にて見えた光景、淡藤が毒蛾の翅に抱かれている>>143事を知ったならば。紺瑠璃を大きくさせては揺らしたことだろう。]
…の、…毒蝶…
[掠れる音色は、震える声は、誰の鼓膜を突ついただろうか。 自分が欲した銀月に、安安と触れる蝶に抱くは嫉妬か、はたまた別の感情か。 その銀月が此方を見た>>160事など、狭まった視界では目にも入らず、ただ乾いて行く脳内と喉を自覚し得ては唇を噛み。]
(164) 2014/09/18(Thu) 23時頃
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……月は誰にでも優しいから。
[――それはまるで、幼子の対抗心を露わにしたもの。 睨む様にそちらを見詰めたならば、直ぐに逸らしては目前に揺蕩う蝶へと視線を落とし。 その射干玉の毛先から布がするりと抜けたならば、震えを抑えた声色で「出来たよ」と。…花に終わりを告げた。]
ねえ、キミ達って普段、何してるの。
[そうしてまたも紡がれるは、花の事。 空気を変えるかの様にまた、話題をすり替え。 その布団にごろりと寝転がったのならば、頬杖をついては丸窓を見上げて。また坐る花へと視線を移せば、ぽんぽんと先の通り自分の横を無言で叩く。]
キミはさあ、さっき中庭を手入れしてたみたいだけど。 …秋の花、なのかな。綺麗だけど、色彩が眩しかったよ。
[記憶を思い巡らしながら、視線を牢の床へと移し。 脳裏を彩る花々を思い出しながら、再び唄う]
(165) 2014/09/18(Thu) 23時頃
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[緩やかに尖ったこころを花に肯定、包まれたのならば>>177 その尖りも少しは落ち着いただろうか。
ごろりと横に転がる花から漂うのは、微な櫻の香。 鼻をついたその香に目蓋を休め、その蝶頭に春先の桜を辿らせながら それでも夜咲く櫻には叶わないだろうと、ちいさく吐息を洩らした。
擦り寄る躯は如何にして受け容れようか。 まるで幼子だと先の自分を棚に上げ、乾いた髪を一撫で。 その髪飾りを指で摘まんだならば、世辞のひとつでも投げただろうか。]
(194) 2014/09/19(Fri) 01時半頃
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琴…嗚呼、ここに初めて来た時、ちいさくその音を聴いた気がする。
[――それに乗る、まるで溶けて消えそうな歌も。
軽やかな琴の音に乗った愁いを帯びた柔らかな聲。 琴の音もまた、夕闇に生えて綺麗なものであったと。
そうしてころころと隣から鳴る鈴の音に、心地良さそうに目尻を緩めては目蓋の裏にて視線を当てる。 宴の間に響く嬌声など弾いてくれそうなその鈴の音。 ころころ。ころころ。 先の悲しい話とは変わった音に、暫し安堵さえ心持に。]
(195) 2014/09/19(Fri) 01時半頃
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おぼろサン、っていうのは分からないなァ… お茶、美味しいんだ? ならその琴の人と共にすれば、良いひと時を過ごせるんだろうね。
部屋に飾る花はキミが生けてさ。
[空気に乗せる言葉はただ夢言葉。ふよふよと甘泥な蜜に脚を付け、微温湯にこころをふやけさせる。 ――そこまで花を揃えるのは、大変そうではあるけど。 蝶方の聲を思い出すと、咽を鳴らす。
軈て続けられた唄には釣られるようにはにかみ笑い。 蝶はその翅を花頭に当てて、またもや手を滑らせた。]
チョコレート…?
[そうして手に入らなかったと悔やまれた庭花の事を、なにとか頭に埋まる知識で探しては見るけれど。花のことに疎い自分は到底分かるはずもなく。 「お腹が減りそうだね」――なんて。 そんな浪漫の欠片も無い事を、花へと告げ。
長閑な夜は、緩に過ぎて行く。*]
(197) 2014/09/19(Fri) 01時半頃
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[蛾に毒された月を、男は果たしてどう取るだろうか――
櫻と話すその横、近くの牢。 冷たい籠の中にて咲く月は毒に侵され犯されて。 月の口から紡がれる言葉はどんなものか、気にはなるけれど耳は届かず。
先の蝶声にて囁かれた挑発>>=10には、思わずに大きく顔を瑜伽め口先から厭味に似た負けず口を、「――月は誰にでも優しい」と、優美な銀月を想って只々口先を切る。
そう。花は誰にでも蜜を遣る。 されとて月も、拒む術無く誰彼を照らす。
ただ其の事実を櫻の唄を通して解ったならば――胸に燻らせる思いは、そう。怒りなどでは無い。妬みなどでも到底無い。 ただ銀月を手中に収め切れずに居た自分への恥と、――僅かな寂寥。]
…明日は蛾でも、愛でてみようかな。
[ぺろり。口端に舌が這った。*]
(=12) 2014/09/19(Fri) 02時頃
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