223 豊葦原の花祭
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双子 夕顔は、メモを貼った。
2015/04/20(Mon) 09時頃
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―うすずみさまの根元で―
[少女は巾着を持たせた女性を、まるで自分の作品でも眺めるような按配で眺める。 満足そうな笑みは、やや見た目の年に似合わない。 それはまるで、娘に晴着を着せて喜ぶ母親のような。]
楽しんで、おいで。
[ふぅわり笑って見せた表情はひどく穏やかで、お祭りに興奮しっぱなしの女性と比べ、どちらが年長か分からないありさまだった。 尤も、重ねた生の長さで言うならば、仮にこの女性が見た目通りの年齢ならば、少女のほうが実はずっと長いのだが。]
わたしは…もう、お祭り見てきたから。
[ひらひらと袖を振り、祭りへ向かう女性を見送った。]
(13) 2015/04/20(Mon) 09時半頃
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――おかあさん。
振り返ると、“娘”が気恥ずかしげに立っていた。 どうしたの、と尋ねると、えっとね、と言いよどんでいる。 そのどこか困ったようにも見える様子を見ていて、気づいた。
「もしかして、大事なお話?」
笑みと共に尋ねれば、暫くの間の後、娘はうん、とうなずいた。 緊張しているのだろう、切れ切れに話す内容は、何某に好きだといわれたというお話。 お嫁さんになってほしいと言われ、つい逃げてきてしまったのだという。 私はにこりと笑みを深くした。
「おめでとう、――。貴女も、彼のことが好きだったんでしょう?」
さっと頬を朱に染め、なんでわかったの、と目で訴えるけれど、貴女はもし、彼が気に入っているのでなければその場で平手打ちをやっているはずよ。 逃げてしまったということが、貴女の好意を一番はっきり示しているじゃないの、と言えばますます顔を赤くした。
(-8) 2015/04/20(Mon) 09時半頃
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愛らしい娘だった。 幼いころに母親を病で亡くし、父親は残っているものの娘の心などわからない。 寂しさが高じて、“母”を求めた哀れな子。 現れた私は本当の母ではなかったけれど、あの子の望むままに愛情を与え、慈しみ、育てた。 とはいっても、私ができることは限られていて、あの子の母がこの子に教えたかったであろうことを想像して伝えたに過ぎない。 それでもあの子は、偽りの母を愛してくれた、と思う。
祝言を上げるのを見守り、嫁いだ先でもずっと見守っていたけれど、あの子には私が見えなくなった。 それもそのはずだ。 母親は、嫁ぎ先にいるはずがないのだから。
決して幸福とは言い難い生活だったのではないかと思う。 娘と一緒になった男は、酒も博打もほどほどにやっていたし、稼ぎも決してよくはなかった。 その日の食事に頭を悩ませることも一度や二度ではなかったし、度々内職をせざるを得なかったのも知っている。 けれど…誠実では、あった。 あの子は最期のその瞬間、先に逝った旦那を想い、子供達に囲まれて、穏やかに息を引き取ったのだから… きっと、幸せだったのだろうと思いたい。
(-9) 2015/04/20(Mon) 09時半頃
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[月が高く上り、喧噪の色が変わる。 そろそろ、なんだろうか。 赤い手毬を抱え、人のいない方、いない方へと歩いてゆく。 …小さなきっかけが、頭の中をひどくかき乱すものだから。]
…あ。
[ふと目をやった袖から、夕顔の花の柄が消えようとしていた。 きっともうすぐ、“夕顔”も終わる。 浮かんでは消えてゆくいつかの記憶を追いかけて、受け流して。 けれどそのどの記憶も、“名前”は教えてくれない。 その時の私の名も、共にいたはずの誰かの名も。
ざぁ、と流れる風が、すべてすべて奪い去ってしまえば良い。 忘却は救い。 だって、愛しい存在の最期ばかりが積み重ねられた記憶は、こんなにも…つらい。 きっと彼の記憶も、もうすぐ白く塗りつぶされて、その名もこの名も消えて逝き… そしてまた狭間の時がやってくるまで、表情一つ、思い出せなくなるのだ。]
(17) 2015/04/20(Mon) 11時半頃
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――… てんてんてん うすずみさまの おまつりで てんてんてまり もらいました てんてんてまりは どこでつく さくらの おはなの したでつく したでつく…
[てまりを手の中で転がし、ぽんっと投げあげ口ずさむ。 広場の端へと向かったところで、どこからともなく歓声が上がった。 わぁっと、老若男女、一斉に気配が中央の巨木へと向かう。 振り返れば、先まで桃色のつぼみを鈴なりにつけていたうすずみさまが、真っ白に覆われていた。]
うすずみ…さくら…
[その名の意味を理解して、少女はぽつりと呟く。]
(18) 2015/04/20(Mon) 12時頃
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庭の桜が花をつけた。 ゆうちゃんが嬉しそうに、お花見だよ、という。
「お花見?」
それは、桜を見ながら催す宴のことらしかった。 普段は静かな庭に、大人も子供も集まって、馬鹿みたいに騒いでいる。 私は庭の片隅で、そんなかれらをそっと見守っていた。 この桜は、近所でも随分と有名な、立派なものだったらしい。 ゆうちゃんが、内緒、と言いながら三食のお団子を持ってきてくれたけれど、“夕顔の精”である私は当然食べることはできなかった。
(-16) 2015/04/20(Mon) 12時頃
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それから幾年。 桜の花が満開のころ、ゆうちゃんはお嫁さんをもらった。 小さくて泣いていたゆうちゃんは、ほかの誰よりも立派な、たくましい体つきの大人の男になった。 きれいだけどちょっと気の強い、しっかりもののお嫁さんをもらって、ゆうちゃんとっても嬉しそう。
「おめでとう。」
囁いた私の声は、ゆうちゃんにはもう、聞こえない。 近所のおじさんにからかわれて、照れたように笑ってるゆうちゃん。 お酒飲まされて酔っぱらって真っ赤なゆうちゃん。 仕方のない人ね、ってお世話をしてたのは、ゆうちゃんのおよめさん。 ゆうちゃんの頭をなでるその人の手が、うらやましかった。
(-17) 2015/04/20(Mon) 12時頃
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…――私はもう、ゆうちゃんに触れることすら叶わない。
ゆうちゃんの日常は、穏やかに過ぎてゆく。 見えなくなった“夕顔の精”の存在なんて、忙しい日々の隙間に零れ落ちてしまう。
ゆうちゃんに、子供ができた。 男の子と女の子の双子ちゃん。 奥さん、とっても大変そうだったけれど、ゆうちゃんが泣いて喜ぶものだから、それだけでとっても幸せそう。
「ゆうちゃん、もう、一人じゃないね。」
さびしくないね。
(-18) 2015/04/20(Mon) 12時頃
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家族が増えて、ゆうちゃんのお家が少し狭くなった。 少し大きくしようか、と話をしていたのは知っていた。 だから、お庭が狭くなっちゃうのは仕方ないんだ。
すでに老木となり、盛りを過ぎたらつける花の数も減った桜の木が、伐り倒されてしまった。 燃やすと良い匂いがするんだ、とか言ってたけど、煙の臭いは多分かがないよ、ゆうちゃん。
あら、こんなところに雑草。
奥さんが指差したのは、花の時期ではない、夕顔のつるだった。
(-19) 2015/04/20(Mon) 12時頃
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――あぁ、それは、夕顔だよ。
答えたゆうちゃんが、なつかしそうな顔をする。
――それは、取っておいておくれ。
精霊が住んでいるから、なんて、それじゃ奥さん、冗談だと思うよ。 ほら、子供たちも笑ってるよ。 馬鹿。
目尻から頬を伝う滴は、地面に落ちる前に消えてしまい、染みひとつ残すことはなかった。
(-20) 2015/04/20(Mon) 12時頃
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[背後の桜を振り返る。 そちらは優しい桃色で、こちらは普通の桜なのだと思う。 もう一度、うすずみさまを遠く見やる。
その姿は夜陰に静かに清廉に佇む。 どこかぴりっとした空気を感じるのは、神様がいるからだろうか。]
…なんか、哀しい色。
[思わず呟いた声は、風に流れて消える。 そう、感じてしまったのは、少女にとっての白という色は、“別れ”の色であるからかもしれなかった。]
(19) 2015/04/20(Mon) 12時頃
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双子 夕顔は、メモを貼った。
2015/04/20(Mon) 12時半頃
双子 夕顔は、メモを貼った。
2015/04/20(Mon) 15時半頃
双子 夕顔は、メモを貼った。
2015/04/20(Mon) 15時半頃
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[うすずみさまは、月明かりを受けて仄白く幻想的に浮かび上がる。 その姿をぼんやりと眺めていると、ざぁ、と強めの風が吹く。]
っ…
[着物の裾が翻り、反射的に抑えようとして、抱えていた手毬を転がしてしまった。]
待って…
[ころころと逃げるように転がる赤を追いかけ、少女は駆ける。 と、視線の先でその手毬が誰かのつま先にぶつかり、転がるのをやめた。 きれいな手がそれを拾い上げる。 顔をあげてみると、それはとてもきれいな男の人だった。 きれい、なんて陳腐な言葉では、足りないような。]
あ…
[ありがとう。 差し出されたその手毬を受け取りながら、そういおうと思ったのだけれど。 まるで何かに魅入られたように、言葉も体も思うようにならない。]
(38) 2015/04/20(Mon) 16時半頃
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[まるで硬直してしまった少女に、彼の人はどのような反応をしただろうか。 少女は数度唇を舐め、それからようやくか細い声を絞り出す。]
あの、あなたは…
[神さまですか。そう、問おうと思った。 けれど結局肝心なところが音にならない。 少女は両の手を胸の前できゅうと握りしめる。
少女の重ねた生の中で、人間とはよく会い話もした。 時にはあやかしとも出会うこともあったように思う。 けれど、神さまは、会ったことがない…だから、確信は、もてないのだけれど。
その男の人は、少女の知るどんな人とも違う存在だった。 何しろ“願い”が見えないのだ。 これは由々しき事態だった。]
(39) 2015/04/20(Mon) 16時半頃
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[どきどきと心臓が大きく脈を打つ。 人ならぬこの身に、心臓があるのかは知らないけれど。
くらりとした酩酊感に似た眩暈を覚える。 これは、毒だ。 そう思うのに、逃げることも離れることもできないのは…何故?]
あなたは…この地の人ですか?
[何とかして、お話がしたいと思ってしまうのは…何故? 少女は必死に言葉を探した。 揺れる眼差しがうすずみさまを捉え、あまり頭を通さないままに口走る。]
うすずみさま、白いんですね…
[自分でも何を言っているのかよくわからなかった。]
(40) 2015/04/20(Mon) 16時半頃
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[ひどい混乱が少女を襲う。 それは知らない感覚だった。
いつだって、その時に自分を呼び出した誰かが少女の中では唯一で絶対であったはずだった。 今は、ゆうちゃんも亡くなって、唯一絶対の誰かはいない。 それでも、ゆうちゃん以上の誰かなんているはずがないし、いてはいけなかった。 それは、次の誰かに求められ、姿を変えるまでの誠意だ。 それなのに…
こんなにも暴力的に惹かれ、本能が欲する存在は。 これが、神さまというものか。
人間の願いを叶えるという意味で、少女の本質は神と名のつくものに限りなく近しいのに、その存在は人間に近すぎるため、神には至らなかった、それが言霊という精霊だった。]
(-27) 2015/04/20(Mon) 17時頃
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双子 夕顔は、メモを貼った。
2015/04/20(Mon) 17時頃
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[小鈴、の名前が出れば、推測はほぼ確信へと変わる。 あぁそうだ、きっと、この人は。]
ぁう…
[やや乱暴な手つきで頭を撫でられれば、なすがままに頭が揺れ、小さく声を漏らす。 反射的に挙げた手が、頭を撫でる手に触れて、そこからぴりりとした何かが走ったような気がした。 乱された髪を整えるのもそこそこに、目線を合わせてくれたその人を正面から見つめ、幾分はっきりした声を出す。]
怖くない、怖くない、です。 あなたはとっても綺麗で優しい人だもの。 …でも、やっぱり別ものです。 慕う人の数が違うもの。
[ぷうと膨らませた頬は、まるきり子供の仕草だった。]
(51) 2015/04/20(Mon) 23時半頃
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[その時々で、たった一人しか幸せにできない私。 それも、必ず幸せにできるわけでは無い。 そんな私が並ぼうなんて、比べるのもきっとおこがましい。 そう思うのだけれど。]
…あの。 お願い、聞いてもらえますか。
[唐突な問いに、彼の人はどんな顔をしただろう。 ばっさりと切り捨てられなければ、お願いを口にすること許されただろうか。
またいつか、ここに来てもいいですか。 私のこと、覚えていてもらえますか。 貴方と出会ったこと、覚えていてもいいですか。
願いはたくさんあったけれど、なぜだか最終的に私が口にするのは…
ぎゅってして、いいですか、になった。*]
(58) 2015/04/20(Mon) 23時半頃
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双子 夕顔は、メモを貼った。
2015/04/20(Mon) 23時半頃
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/* うー、鳩だと更新がやりづらいごめんなさい それでも鳩から全角スペース技身につけたから少しは見やすくなったはず
(-31) 2015/04/21(Tue) 00時頃
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っ…!
[久し振り。>>62 そう言って、手を広げてくれたその人に、唇罠泣かせ少女は抱きついた。 まるで迷子が母親を見つけたような按配に。 ふぇ、と情けない泣き声が漏れる。 頬を滑る涙が顔をうずめた肩口に染み込んだ。]
ごめ…なさい…
[貴方のこと、覚えていなくて。]
ありがとう…
[私のこと、覚えていてくれて。 狭間の時を超える度、記憶の殆どを白く塗りつぶされてしまう少女には、その人と過去に出会った事があるのかどうかはわからない。 わからないけれど…酷くほっとした。]
(91) 2015/04/21(Tue) 09時半頃
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[貴女は私の願いを叶えてくれたけれど、貴女の願いは誰が叶えてくれるの?
そう私に尋ねたのは、“お母さん”だった。 その時私は何と答えたっけ。
ーー大丈夫だよ。私の願いは、貴女の願い。
その答えに返された、複雑な表情の意味が、その時は分からなかった。 けれど、きっと、本当は…ーー]
(92) 2015/04/21(Tue) 09時半頃
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私、夕顔って言います。 でも、もうすぐ“夕顔”じゃなくなるの。
[そっと抱擁を解き、少女が呟く。 少女の纏う着物から、夕顔の花が消えかけていた。 今や掠れた筆の跡のようになったそれを、少女は寂しげに見やる。 よく見れば、着物の裾の方から紅色が抜け、白くなり始めているのも分かるかもしれなかった。]
また、狭間の時に、ここに来ます。 その時は、姿も名前も違うと思うけれど。
[少女は笑みを見せる。 それは幼い顔立ちに似合わない、妙に達観した大人びたものだったが。]
また、貴方に会いに、来ますから。
[また、久し振りって、言ってくださいね。 そう言って小さく首を傾げた時には、ほんの少し影が薄れたようだった。**]
(93) 2015/04/21(Tue) 10時頃
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双子 夕顔は、メモを貼った。
2015/04/21(Tue) 10時頃
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時が流れ、ゆうちゃんはおじいちゃんになった。 小さかった坊やにも、お嫁さんができて、子供が生まれた。 双子ちゃんもそれぞれ家族を持って、なんとお姉ちゃんの方はそろそろ孫もできるんだとか。 ゆうちゃんの家には、家族がいっぱいになった。
縁側に座るゆうちゃんに、奥さんがお茶を持ってくる。 何見てるの、と聞かれたゆうちゃんが指差した先は、蕾の膨らんだ夕顔のツル。 あぁ、精霊が宿るって。 小さく笑う奥さんに、ゆうちゃんは穏やかな笑みを見せた。
(-44) 2015/04/21(Tue) 10時頃
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ーー夕顔が咲いたらな、また会える気がするんだよ。
そう言ったゆうちゃんに、奥さんは、まぁ、と笑った。
夕顔の花、咲いたらゆうちゃんに会えるのかな。 お話できるのかな、手をつなげるのかな。 がんばったね、って、頭撫でてあげられるのかな。
私は夕顔の蕾をそっと撫でた。 がんばれ、がんばれ。 早く、早く咲いておくれ。
(-45) 2015/04/21(Tue) 10時頃
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その3日後、ゆうちゃんは永眠りについた。 ゆうちゃんは、ひ孫さんの顔は見れなかった。 …私の顔も、見れなかった。 季節外れの冷たい風に凍えた蕾は、最期まで開くことがなかった。
「おやすみ、ゆうちゃん。」
もう動くことのない、節の目立つ指をそっと撫でて、私は呟く。 集まった家族が、隣の部屋で賑やかにお話ししている。 おじいちゃん、あんな人だったよね。 こんなこともあったよね。 そんな、楽しい思い出を語り合いながら。
ゆうちゃんは幸せだ。 たくさんの家族に囲まれて、こんなにも、想われて。 そう思うのに、やっぱり私は笑いながら涙が止まらなかった。 そしてやっぱり、落ちた雫は布団に着く前に消えてしまった。
(-46) 2015/04/21(Tue) 10時頃
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双子 夕顔は、メモを貼った。
2015/04/21(Tue) 15時頃
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/* うすずみさまに恋しそう(真顔
夕顔の性格だから言わなかったけど、名前をくださいくらい言いそうな勢いで惚れてた
(-48) 2015/04/21(Tue) 15時頃
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/* う、ぁぁあ(机だんだん うすずみさま、ずるい、ずるいよ(褒め言葉
(-49) 2015/04/21(Tue) 16時頃
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[ゆびきり。>>108 それは、少女もよく知る約束のしるし。 きらりと舞った蝶が、指先から袖に移るのを、幻でも見るように眺める。 小指を差し出した右手の袖に、とまった蝶はそのまま布地に縫い込まれる。 袖をきゅっと握りしめると、大事なもののように胸に抱く。 撫でられた頭の感触も、優しいまなざしも、声に含まれたぬくもりも。 この蝶とともに、私の中に残ってくれますように。 誰とも知れぬ相手に、少女は願う。
とん、と背中を押されるままに、歩き出す。]
…そう、そうですね。 楽しい気分で、またね。
[そっと口の中で繰り返し、少女はいったん振り向く。]
またね…――。
[唇だけで紡いだ彼の人の名前は、間違っていなかっただろうか。]
(114) 2015/04/21(Tue) 16時半頃
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[手毬を抱え、少女は小走りに駆けだす。 入り乱れる記憶に沈んでいた心が少し浮き立つようだった。 少女の半ば以上白くなった着物に、色とりどりの蝶がきらきらと揺れる。
お月様が下りたならば、お祭りは終わってしまう。 あと少し、もう少し。]
ふふ、あはは
[せっかくならば、今を楽しんでしまえばいい。 どうせ、狭間の時を超えて誰かの元へたどり着いたら、またしばらく自由などないのだから。 それを不便に感じたことは勿論ないけれど。 少女は桃色の花弁を巻き上げ、手毬で戯れ遊ぶ。*]
(115) 2015/04/21(Tue) 16時半頃
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双子 夕顔は、メモを貼った。
2015/04/21(Tue) 16時半頃
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/* テンションあがりすぎて危ない子になってるね、よくよく読んでみると(真顔
(-52) 2015/04/21(Tue) 17時頃
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/* 仕込み予定だったネタはほぼ消化したけど… うーん、残してる分はあるんだけど、これは未来のロルにとっておこうかな…でもちょっと鬱いなぁ…うーん
うすずみさま好き好き
(-53) 2015/04/21(Tue) 17時頃
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