徐々に加速していく風景。
遠くなっていく、構内の群衆の顔の一つ一つ。
それら全てを振り切る様に、雪燕は気高く、景気良く、歓びを叫ぶ様な汽笛を一つ鳴らした。
ちゅぴちゅぴ囀る余韻と真っ白な煙霧を7番ホームに残して、機関車はスピードを上げながら旅路を進み始めた。
「皆様、ご乗車誠に有難うございます。
この汽車は明日午前7時着の、スウェルグ行きとなります。
車掌はわたくし、パルック・ハロー。明日の朝までのお供となります。
シーツの乱れ、靴磨き。入用あればお申し付け下さい…
飲食物は食堂車及びラウンジにて。
お手洗いは一等車両と二等車両の間、二等車両と三頭車両の…………」
車両の廊下に立ち止まり、順繰りに挨拶を述べていく車掌。
やがて車窓から見える寒冷の都市の風景は、昼の太陽を受け輝く大河によって分断される–––––––
(#1) 2015/11/29(Sun) 00時頃