帰ろう、幼い娘にそう言って聞かせる。けれども、娘は大袈裟に首を振ったまま、じっと色を暗くする水平線の向こうを見ている。漁船の舳先にとまっていた海鳥が何度か鳴いた後、母親がもう一度口を開こうとしたその時、おかあさん、と女の子は声をあげ、視線の先へと真っ直ぐに指をさした。
(#1) 2013/12/18(Wed) 22時半頃