長老達とリンドクヴィスト夫人の会議の結果を受けて、
村では「生贄」を差し出す準備が始まった。
ざわめく村の中で、その真の意味を知るのは年寄りだけ。
それを知らぬ彼らの子や孫、ひ孫達は、年寄りの皺だらけの手を顔を見つめながら、陶酔しきった「年寄りの長話」に耳を傾けることになるだろう。
「今日は『祭』の日だ。
村は『生贄』――『贖罪の巡礼者』を探しているんだ。
祭で『生贄』となった者は、『エデンの園』をぐるりと巡り、森の神の力を与えられ、『浄化』されて還ってくるんだ。
そう――『生贄』に選ばれることは、我らこの村に生まれ育った者にとっては、この上ない栄誉なのだよ。久しき間……何十年もその『刻』は来なかったが、今年の『祭』はそれにふさわしいという御徴があったのだ。
さあお行き。
我らの家の『栄誉』の為に。
誇り高き『生贄』となり、『巡礼』の輪をくぐり抜け、『浄化』されて還っておいで。」
(#0) 2010/07/31(Sat) 08時頃