[人の一生など一瞬の事。
彼と共にあると決めた時から、ずっと覚悟はしていた。つもりだった。
彼が弱り始めてから、街を転々とするのを止めた。
その土地に腰を添えたまま、薬屋はずっとそこに。
流石に不振がられ手は困る為自分は店の奥に引っ込んで、話相手は店番の老人だけ。
買い出しの為の外出は顔を隠して、歳を取らぬ存在と悟られぬよう。
彼がさらに弱ってからは、店を開けるのを控えた。
薬屋の内情を探る者を殺したりもしたが、それをリーには話さない。
きっと、彼が親しくしていた人物も含まれていただろうから。
彼の死期が見え始めた頃、薬屋は彼に服薬を命じる。
それは死期を早める訳でも、引き伸ばす訳でも無い。
彼が死んでも遺体はそのまま。
幾日立っても腐らぬ遺体に満足そうに手を這わせ、漂う彼の魂にも秘密にしたまま、
ガラスの棺と薬液に彼の身体を横たえると、ようやくその街を後にした。
店の中に、複数の他殺体を残して。]
(@64) mzsn 2014/11/03(Mon) 15時半頃