ん。わかった。[明之進を見かけたらとの声にはそう言って。ズボンのポケットに手を突っ込むと、じゃあなと歩き始めた。ふと、すれ違い様に小さく虎鉄は呟く。]―――大事ならば手放す無かれ。[それは陽のような声ではなく、冷たく哀しい、虚ろな声。今その表情にあるのは、無だけ。]去りし日は戻らず。消す事もまた、叶わず。[声の途切れには、ざぁ、と風が吹いて庭の樹が大きくざわめいた。樹の声が止む時には其処に虎鉄の姿は無く。風に遊ばれた木の葉が一片、くるくると*舞い落つのみ。*]
(@18) 2010/08/07(Sat) 16時半頃