25 花祭 ― 夢と現の狭間で ―


【見】 若者 テッド

ん。わかった。

[明之進を見かけたらとの声にはそう言って。
ズボンのポケットに手を突っ込むと、じゃあなと歩き始めた。
ふと、すれ違い様に小さく虎鉄は呟く。]

―――大事ならば手放す無かれ。

[それは陽のような声ではなく、冷たく哀しい、虚ろな声。
今その表情にあるのは、無だけ。]

去りし日は戻らず。
消す事もまた、叶わず。

[声の途切れには、ざぁ、と風が吹いて庭の樹が大きくざわめいた。
樹の声が止む時には其処に虎鉄の姿は無く。
風に遊ばれた木の葉が一片、くるくると*舞い落つのみ。*]

(@18) 2010/08/07(Sat) 16時半頃

← ↓ ■ □

ツール

クリップボード

ピックアップ

>>【】