[――長い夏が終わったとて、まだ熱は、残っている。
暖かい面影は尾を引いて今でも居座り……肌を焼くとまではいかずとも、まだしっとりと湿度を伴って、彼等の傍にあった。その青年は、学園の正面門を通り過ぎて、その後は憂鬱そうに木に持たれかかる。
そう、何かを待つように。
彼の名は、至祈展鳴海(シキテンナルミ)。
皆野瀬市にも根を下ろす、至祈展財閥の御曹司だ。
そして、桃園学園に通う高校三年生。
……とはいえ、あまり教室での滞在時間は長くない。
病気がちと称してはサボり、すぐに姿を眩ましてしまうのだ。そして、時には女生徒と共に……。
それでも、教師からの評判は悪くない。答えは簡単で、成績が非常に優秀だからだ。家から多大な寄付金が学園へ支払われているという事も手伝って、彼の少々の素行の悪さは、教師から目こぼしされている。]
(@17) 2022/09/02(Fri) 18時半頃