―――…っ……!
[こめかみに痛みを感じて、思わず造花を取り落とす。
数秒の間、耳鳴りまで聞こえてきて、顔を俯けて眉を寄せる。
すぐに顔を上げるも、顔色は先ほどより少しだけ悪く見えるかもしれない。
床に取り落とした造花は縁起が悪いから、使えない。
箱の中を見ると、破損する可能性も含めてか造花は人数分より少し多く用意されている。
そっと教壇の上に置いて、新しい造花を手に取ったところで、永池の姿が見える]
永池さん、ご卒業おめでとうございます。
[笑みを向けて、造花を付けようと一歩だけ距離を縮める。
きっとあまり傍に寄られるのも嫌だろうし、何よりも病院特有の消毒薬の匂いが自分に染みついている気がして、手を伸ばして造花を付ける]
1つ聞きたいことがあったはずなんですけど。
何故か忘れてしまいました。
[この機会を逃せば、もう聞けなくなるかもしれないと分かっているのに、思い出せない。
思い出せないのは大したことがないからか、あるいはもう意味が無いからか。小さく笑みを零して、ゆっくりと首を振った]
(@16) 2011/02/26(Sat) 20時半頃