[ゆっくりと改善は見えつつも、大勢の視線を集める場での発話は相変わらず苦手なまま、中学生になった。
中学生ともなれば、皆、他者に関心を持つようになる。
殆ど喋らない自分に奇異の視線を向ける者もいたが、数少ない小学校からの友人がフォローに入ってくれて、さほど気にはならずに済んでいた。
そうして、中学二年生になった時のことだった。
二年の担任は、年若い女教師だった。
努力、友情、そして勝利。どこかの少年漫画のような、そんな言葉がよく似合う人。
努力すれば。友情や愛情を持って接すれば。不可能なんて、きっとない。
……彼女の視線が、"話そうとしない大人しい引っ込み思案の生徒"へ向くのは早かった。]
『日向さん、貴女も皆とお話したいでしょう?』
『少し勇気を出せば、大丈夫!頑張ろう』
[笑顔でかけられた言葉に、訳も分からないまま曖昧に頷いていた。
話は、したかったから。
きゃあきゃあと燥ぐ女子生徒の輪、くだらないことで盛り上がる男子生徒の輪。
そういうものを何処かで羨ましく思っていたのは、確かだったから。]
(@14) 2015/02/07(Sat) 21時半頃