―商店街―
こんにちは。今日も暑くなりそうですね。
[にっこりと、輝くような、と表現するにふさわしいような笑みを浮かべて、道行く中年の婦人に挨拶する。駅前の町中とは言っても、大都会ではない。今では顔見知りの人間もそれなりにいる。この婦人はと言えば、大体いつだってせかせかとしていて、口を開けば誰かの文句を言ってばかりで、それが生きがいのように思えたのだが…
今日はその婦人が近づいてきて、彼女に手のひらを見せた。
勾玉が握られている。彼女が道端に座り込んで売っているものと同じ、けれど今手のひらにあるものは、烏玉のような漆黒に染まっていた。]
……おや。ここまで黒いのは初めて見ました。何か、よっぽど嫌な事でもあったんですか?嫌な事って言っても、今は別にそんな気持ちじゃないでしょうけれど。
え?ええ。息子が今年は受験なのに。ろくに勉強もしないで遊んでばかり。娘は高校に入ってから夜遊びで遅くまで戻ってこない…
この町、夜遊びするような場所あったっけ…あ、いえ。何でもないです。そう、旦那も外をほっつき歩いてる…大変ですね。
(@4) 2016/06/14(Tue) 22時頃