―― いつかどこかの眩い時代の小さな出来事 ――
[静まり返った図書館に佇むのは物静かそうな眼鏡をかけた色素の薄い青年。
彼は本を手に取りパラパラとページを捲り、首を横に振って肩につく程のアッシュブロンドを揺らしてはそれを戻す
この図書館に通い始めてから、訪れる度にそれを繰り返しまともに読んだことは無かった。
少しばかし背が低く目が悪いぐらいしか言及することのないごく普通の家庭で育った彼は、けれどここにいる間だけは普通では無かった。]
……これじゃない。
[手に取っているのは植物、鳥類の本ばかりだ。
物心ついた頃からそれらが好きな青年は、けれどどんな美しい花を、珍しい鳥を見ても満たされることは無かった。
何を求めているのか自分でも分からない、何よりも鮮やかな、そんな漠然としたイメージだけが心を支配していて。
見つけなければいけないのに、焦燥感が青年を苛立たせその日の帰りはいつもより足早になっていたのだったか]
(-1031) erla 2013/08/08(Thu) 20時頃