[ふ、と目が覚める。とてもとても、大好きだった人が生き返る。そんな、暖かい夢をみたのだ。眼が覚めれば、少しだけ、泣いていたようで。眦から頬にかけ、雫が伝うのがわかる。自分が起きた事に気付いたのか、不意に、幾重にも皺の刻まれた手を握ってくれる感触がして、ぼんやりとそちらを見る。愛しい、孫娘がそこにいた。その手をきゅっと握り返すも、もうあまり、力が入らない。幼い彼女はふと、何もない虚空を視あげ、微笑んだ。子どもを産んでから、自分には、もう何も視ることができなくなったけれど。彼女には、何かが視えているのだろう。それはいつぞやの自分のように。]
(-1005) rinco 2013/08/08(Thu) 18時頃