[...は、ヴェスパタインが生前暮らしていた、ランタン工房へ足を踏み入れた。工房内はきちんと片づいており、ヴェスパタインの端正な性格が偲ばれたが、床板にはところどころ、爛れたような痕跡があるのを...は見逃さなかった。ヴェスパタインの流した血が残した傷跡なのであろう。上に物を置くなどして、何げなく隠そうとしているヴェスパタインの、心遣いが痛々しかった。]
期待以上の働きを見せて貰ったよ…俺の目は狂っちゃいなかったな。
これまで俺が出会った中でも、お前さんは屈指の剣士だった。
だが俺は結局、お前さんから静かな余生を奪っただけなのかも知れん。
そこは済まんと思う…お前さんが、最後の力を振り絞って守ってくれたアンゼルバイヤを守るために、この俺も命を懸けるぞ。ヴェスパタイン…!
お前さんの病毒を、この地に残すわけにもゆかん。
それはヴェスパタイン、お前さんだって望むところではないだろう?
[...は、工房に火を放った。たちまち炎に包まれてゆく工房の片隅から、完成品のランタンをひとつ取り上げて、...は踵を返した。]
(-265) ガル兄 2011/11/27(Sun) 00時頃