暇を持て余した日向のE
〔なおもぼんやりと雨を眺めていると、用務員さんがやってきた。
無言で隣に立たれ慌てて立ち上がる。座り込んでいたから邪魔になっていたのだろうか。
土にまみれた顔は汚れていて、男性の恐さを引き立たせる。〕
あ、あのごめんなさい。すぐに…
…え?これ、貸してくださるんですか?
〔無愛想に差し出された傘。男はにやりとニヒルに笑って立ち去った。〕
ファンになりそう…
〔借り物の傘は穴が空いていた。滴る雨水、そんなことさえ、今日はどこか風流に感じてくるくると傘を回す。
上機嫌で歩いていると校門を出たところで名前を呼ばれた。〕
あっ!パパ!!それにたまこも!迎えに来てくれたの?
パパだぁいすき!!
〔傘を傾け笑う姿は、私の大好きな人。
用務員さんには悪いけど、傘は畳んで、パパの腕に抱きついた。二人と一匹相合い傘で帰路に着く。〕―完―
(-112) 2013/08/13(Tue) 21時頃