― 空白 ―
味、変わりますからね。
[紫煙を吐き出しながら、隣の中年の教師にそう説明する。
彼が興味深そうに手の中で弄んでいるオイルライター。ハタチの誕生日に、浮かれて、記念に買った。
形から入った自分は、正直な所、味だとか、そんなものに拘りがあったわけではなく、
ただ、"良いモノ"を使っているつもりになって、オイルによって風味が変わるなど、気付いたのは後になっての事だった。]
どうですか、一本、それで。
人によっては、その風味が駄目とも言いますし。
[彼もまた、結婚して何年だかの記念品として、購入を考えているのだとか。
妻が、好きな物を贈ってくれると言うので、と照れ臭そうに笑う彼は、随分と年は離れているが、数少ない喫煙仲間だ。
今のご時世は喫煙者には優しくない。
だから、自分たちはこうして、携帯灰皿片手に駐車場の片隅に追いやられているのだけれど。]
(-76) 2015/03/18(Wed) 00時半頃