[だから、彼が素直に呼び出しに応じたのは、意外にも思えて。
きっと恐らく、呼び出された理由に心当たりがないはずの彼よりも、出迎えた自分が、驚いた表情を浮かべていた。
それを見て、また怪訝そうに眉を顰める。
このこどもの笑った顔を、見たことがないのが、とても悔しく思えた。
どうしてまた、随分と手強そうじゃないか。
そんなことを考えて、肩に力が入るような感覚に、自分でも笑いがこみ上げて。
不貞腐れたような表情や、誰にも頼るまいと踏ん張る足に、どうしようもなく懐かしさや愛しさがこみ上げる。
始まりは、たったそれだけのこと。
歓迎の証のコーヒーは、あまり喜ばれずに。
次からは、スティック・シュガーとコーヒー・フレッシュを添えてやろうと心に決める。
次があると、妙な確信があった。
帰り際、また来いよ、とかけた声に、彼は芳しい返事はくれなかったけれど。
――その予感が正しかったと知るのは、ほんの数日後の事。*]
(-70) 2015/03/20(Fri) 03時頃