[行きましょうか、とどちらともなく。
まだ残る作業があるらしい教員らに挨拶をし、帰路につく。
とは言え、彼とは通勤手段も方向も違うんだったか。
短い道のりを共にしながらも、話は続く。]
『でもね、やっぱり、良くないと思いますよ。本人にとっても。子供の思い込みは何処に向くか、分かりませんから』
[どうやら本気で恐れているらしい声音に、数秒のラグを挟んで、思わず笑った。]
彼らは、こどもたちは、そこまで馬鹿じゃないですよ。
[それでも彼は、『ホント、南方先生って、楽天家だなぁ』と呆れ半分に笑って、
『それでは、僕はこっちですので』と正門へと去って行った。
その背に、貴方も大概、楽天的ですよ、と言ってやりたい衝動に駆られて、ぐっと堪える。
曖昧な孤独の深さを、彼は知らないのだ。
周囲のモノを、ひとを、全てを覆い隠すような闇は、ありふれた日常にこそ潜んでいる。
こどもたちを蝕んでいる。いまも。胸を張れない不幸感が、緩やかに心を殺してゆく。
というのに。*]
(-62) 2015/03/20(Fri) 02時半頃