― 回想・寂れた教会>>11 ―
[足音と人の気配。女は死しても未だに未練があるかのように見守っていた。]
大丈夫ですか?
[声が聞こえるはずもない。今の彼は自分が生きていた時とは全く違う表情をして、覇気がなかった。それは自分が死んだせいでもあり、守ろうと思って行ったことが裏目に出たようにも思えて心が痛んだ。そして墓石に伝わる懐かしく感じる彼の温もり。]
…ここは寒いです。でもあなたがこうしてくれているので今は暖かいですよ。
辛い思いはしていませんが、私は今のあなたを見ている方が辛いです…
[自ら彼に触れてみようと彼の頬に手を翳しても虚しく空を切るだった。会話が出来ないのは寂しい。こちらは彼の姿が見えるのに。
そのまま彼は眠りについた。誰かを呼びに行こうにも自分の姿は誰にも見れない。「起きて」と声を掛けることも出来ない。
生きていれば暖かい部屋で膝枕をしてあげたかったがその願いは届かない。彼の眠る脇に座って手を握るように自らの手を彼に重ねた。誰かが彼を見つけてくれるまで、動こうとはせずに女はその場に留まった。]
― 回想終了 ―
(-48) 2011/11/24(Thu) 23時半頃