[…ここの酒は記憶の欠片を詰めたモノだった。以前修道女に呑ませた酒は、彼女の記憶を欠けさせてこそいないが、彼女の記憶を刺激する程度のモノではあった。だからこそ、彼女が美味しいと思う記憶を再現させたのだった]しょうがないな…。鳴り止まない音に僅かに顔を歪めて、瓶の蓋を一つ一つ開けてゆく。揮発性のソレは部屋中に満ち、解放と同時にあるべき世界へ、あるべき者へ還って行くだろう。一番高いと言った酒。勿論栄光《グロリア》の記憶の欠片の一部でもある。けれどソレはもうない。戻る場所も主もいないのだから。だからこそ呑みほしたのだが]
(1259) 2011/06/05(Sun) 22時頃