―半月ほど前・カフェ『ハルシオン』―
[そのカフェは、デートで何度か使ったことがあった。
雰囲気がよくて食べ物が美味しいと、誰を連れていっても概ね好評だったからだ。
――道也自身は、こんなところはデートでもなければ来ないし、ファミレスやマックでセット頼んだほうが安上がりだよなあと思っている人種なのだが。
そして、同じ女の子と2回以上来たことは今まで一度もない]
[一方、兄の優一は月に二度くらいのペースで一人で訪れている。曰く、どの女の子にも捕捉されていない場所なので気楽にコーヒーが飲めて落ち着くとかなんとか]
気に入った?よかった。
[その時はまだ、彼女ともそれなりに上手くいっていて。
お嬢様学校の制服に身を包んだ可愛らしい彼女と、それに微笑みかける優しそうな彼氏の姿があって。
――自分は働く後輩の姿をそれまで一度も見ていなかったが、それはたまたまシフトの時間がずれていたのか、それとも自分たちのテーブルに来なかっただけで見られてはいたのか。
それは道也には与り知らぬこと*]
(625) 2011/05/15(Sun) 21時頃