[ 抱き締めてみた。どうやら嫌がらない。
こらこら!なんて怒られたら、ごめんと謝って離したかもしれないけど、秀は大人しく自分の腕の中におさまっていた。体勢的に、心臓の音を聞かれている。既に冗談だよとは言いづらい状態になっていた。
結構長い間そうしていたかもしれない。はぁ、とため息をついて髪を撫でた。
どう声をかけたらいいかわからなくて黙っていると、秀が顔を上げてきた。眼が微かに潤んでいる。いや、こっちの眼かもしれないけど。 ]
秀…、
最初から…やり直しても、いい?
[ やり直し、なんて言いながら、変な話だけれど。あの時のリンダはきっと秀じゃなかったんじゃないか、なんて思っていた。漠然と。
だってまるで初めて抱き締めるみたいに心臓が早く鳴っていたから。
いや間違いなく、”秀”を抱きしめるのはその時が初めてだった。
秀は自分をどんな風に見ていただろうか。
やんわり髪を撫でて、秀が拒否しなければ、口唇を重ねた。** ]
(551) yuzuru 2011/03/02(Wed) 23時半頃