[その歌はさすがに伝えられていない。その場で聞いた者だけの特権である。代金はその者の命だったが。当初は自我が曖昧だった、首無しの武者。正確には「殺意と憎悪と怨恨しかなかった」ので歯止めがきかず、自身を陥れた者も周囲にいた者も皆殺しにしたらしい。震えあがった武士の一人が何とか首を差し出し、それを奪っていずこかへ去っていったという。しかもその武士も三日後に死んだという念の入れよう。ちなみに、頭部を取り戻しても攻撃性がなかなか消えず、そのまま怪異と戦い続けて百回を超えた辺りで、ようやく生前の人柄を取り戻していったのであった。なお、この件について首無しの怪異曰く『穏やかな人ほど怒らせると怖いって言うからねー』とのことらしい。]
(551) 2022/09/11(Sun) 07時頃