『俺っちは昏闇飛龍《ドンケルドラッケ》。大抵は暗いとこだの洞窟の中だのに暮らしてる。んで、たまァに狩りをしてウマいもん食って、ってだけの生活なのによ、まァ物好きな人間ってのはいるもんで、封印だの何だの考える奴がいるわけよ。旦那ァそいつに仕事もらって、封印陣で俺っちを封印しようってな寸法だったわけだ。』
[だけどよォ、と残念そうな声音のあとに、盛大なため息。息吐く口を持たぬはずの龍が息つくのは、なんとも奇妙な光景にうつるか。]
『その依頼主が書いたっつう封印陣が失敗も失敗の大失敗! 封印はしっかり成功しやがったのに、封印した場所が旦那の身体ん中だァ。しかも何がこじれたんだか俺っちァこうして動くも話すも出来る。あんまりにも複雑怪奇ワケワカメに失敗するもんだから、どっこにも解呪方法なんざ見つからねェ。仕方ねェから、俺っちは旦那に昏闇飛龍《ドンケルドラッケ》の力を貸しながら、バラバラに戻る方法を探してんだ。途中でちゃっかり嫁さんこさえて一緒に旅するってんだから、旦那も隅に置けねェってーか、嬢ちゃんも懐が深いってーか。』
(539) 2012/01/30(Mon) 03時半頃