―― 織部家 ――
[通夜も葬儀も、ひそやかに行われた。
発見の遅れた遺体。司法解剖に回された遺体。
両親や遺族は最初から学校側に冷たくて、何の連絡もなかった]
[だが、それもしょうがないのかもしれない。
父親も、母親も、息子の部活もクラスも担任も、友人も知らない]
[だから。寧人がしていたボランティア関係者、寧人の友人。
そういう人たちが話を聞いて手を合わせに来ても、きっと迎えられるのは、やつれた戸惑いの表情を浮かべる両親]
………………。
[それが、あの事故の「生存者」だったのならば。
真新しい仏壇の前に通されはするものの、きっとそれ以上の歓迎はない]
[その人が来たときも、変わらなかった。
ただ、一つ。仏間のふすまが細く開いて、そこから中学生くらいの少年がこわばった表情で覗いている以外は]
(513) khaldun 2011/05/29(Sun) 22時頃