[目が覚めるとそこは、見知らぬ場所だった。
もとより、自分にとって見知った場所など、あの森しかないのだが。
自分のいる場所が、人間のいる場所である事には、すぐに気が付き、唸り声をあげる…が、何時の間にか傷口が塞がっている所を見ると、恐らく誰かが治療を為したのだろう。]
…ガウッ。(…ありがとう。)
[一回だけ吠えて、周囲に感謝の意を伝える。
しかし、天の力は戻っている気配はない。
少し賢い程度の狼。それが今の自分なのだろう。]
くぅーん…(これからどうしよう。)
[森にいた頃は、他の動物達と違い、人語を理解し、人間が恐怖する天災を操る力が自分を森の王としての立ち位置においていた。
野生とは分かりやすく、残酷なもので、力を失った王は群れを追い出されるもの。
なれば、既に自分の居場所はどこにもないのだ。]
(492) 2011/06/03(Fri) 07時半頃