[宿泊所へと戻ってきた幼馴染と、兄。ふたりを目にすれば、あっ、と小さく声を漏らした。
『やりたい事をやれ』『後悔するな』掛けられた言葉を頭で反復し、
暇を見つけた時に意を決して、近寄る。]
あの、さ。……景子。
『お返し』……もう覚えてないかな?
ずっと考えてたんだ、何も返せなかったって。何をあげたら喜ぶかって。それで一つ、とっておきがあったのを思い出したよ。
……けど、僕は今日から、隣村に呼ばれちゃってる。
だから、もしよければだけど、またここに帰って来た時にさ。
少しだけ時間をあけて、僕につきあって欲しいんだ。
絶対帰ってくるから。約束する。
[約束だと口に出して笑うと、かつて結んだ小指を立てた。
彼女ももう子供じゃないし、第一色々と信じがたいだろう。
だから指切りはするつもりがないけれど、その形はあの頃の『約束』の名残。
意地でも果たすまでは消えてやるものか。]
(416) 2012/08/12(Sun) 23時頃