それには同意する、が…すまないね、少々浮かれて居るらしい。
例えここで君と一度別れの時を迎えたとしても…君は俺を見付けてくれるんだろう?
…だからかな。俺にはさっきまでの絶望は、もう無いんだよ。
今はただ、君とこの時間を楽しめる事が…何よりも嬉しい。
[言葉と共に伸びた指は、彼の顎を擽るように。
そうして男は、まるで寝物語を語るように、胸にその身を抱いたまま、飽くこと無く他愛もない話を続けはしただろう。
自分が珈琲が好きだと言う事。時計を集めるのが趣味だと言う事。兄が一人、居る事。
そんな話は、夜明け近くまで続きはしただろうか。
やがて、夜明けが近付いた時――別れの時がやって来たその時は。
彼が眠りの淵へと落ちていたのなら、ゆっくりとその身を横たえ、その頬を愛おしげに撫ぜはしただろう。
もしも、未だ彼の瞳が自分を映していたのであれば。まるで少しばかり出掛けてくるのだとでも言うように、"行ってくるよ"、と一言彼に告げただろう。
――何方にせよ。
暫しの別れの口付けは、名残惜しげに…交わしただろうけれど。]*
(394) 2014/10/07(Tue) 00時半頃