[その形の良い唇を釣り上げながら告げられた言葉>>374に、男は小さく苦笑を浮かべはしただろう。
本来ならば、こうして手渡す事など――我儘を、通す事などするつもりでは無かったのに。
だけれど、今宵の夢を夢のままで終わらせるなど、とうに出来よう筈も無く。堪え性の無い自分に嫌気のひとつもさしはしたけれど、それでも彼の――その顔を見れたのであれば、もうそれで良かった。
彼のその名を呼んだのなら、しかと見つめてくるその瞳に笑い。今度は下げられなかった顔に満足し、きつく握られた手>>375は、負けじと握り返しはしただろう。]
そうか、俺だけの我儘で無いのなら良かった。
――……ヨハン。
[そうして彼の同意を得られたのなら。
その手を引いて、柔らかなベッドの上に誘いはしただろうか。
雨の音は、未だ続いていたか、否か。それすらも意識の外へと追いやり、ただその白に包まれた身を抱き。ゆるり、ゆるりと時折髪を撫ぜながら。]
(392) 2014/10/07(Tue) 00時半頃