あ……そうか、知ってるのか。
[結構な騒ぎになったから、どこかで見られていたのかもしれない。何があったのかと問われ――こくり頷いて、ぽつりぽつり語る]
……吸血鬼に、遭ったよ。
俺は――多分、城主達がが『吸血鬼』じゃなくて、『殺人鬼』であるように祈ってたんだろうな。殺人鬼なら、まだ人間だ。俺達が知っている常識を超えた事は出来ないし……
[霧のように掻き消えた城主の姿を思い出す。
そして、どうしようもないくらいに惹きつけられてしまった事も]
分かってるさ。ミッシェルはもう死んでるって事くらい。
犠牲者の名簿みたいなもんを見つけたんだが、そん中にしっかり名前が入ってたよ。
でも、死体は永遠に出てこないんだろうな。骨の一欠けらすら。
[ひょっとしたら、一番に絶望してしまったのは『そこ』だったのかもしれない。
影によって犠牲者の遺体がどこかに持ち去られてしまった、あの光景――]
(383) 2010/06/22(Tue) 23時頃