……、…――懐かし…
[――化学資料集にはいつになっても心を奪われる。
そんな感想を浮かべては、床に座る背は丸くなり。めくりめくり、現を抜かしてしまうのだった。
――そんな事がありつつも、真面目に捜索していれば目当ての冊子は思いの外、すんなりと見つかった。
ふと、冊子から僅かに飛び出す白い角を引き出して見れば、短い感嘆が後に続く。]
――そう、レポート書いたんだったっけ。
ええと…イガラ――じゃない。……、ナントカ錠 …先生。
[――どうして振り仮名を振らなかったのか。
当時の自分を恨みつつ、放っていた携帯を手に取り。灯した画面には、早速「青桐」の文字があった。
そのまま本文に目を通せば、溜息の混ざった笑みが零れる。]
(風邪引きそうなのは、そっちでしょ)
[長らく丸めていた背を反らし、伸ばし。ん、と小さく気を入れ直す。そして、冊子と共にソファーに腰を沈めると、返事を打った。]
(377) 2014/10/07(Tue) 00時頃