― 食堂 ―
[艶やかな吐息も、あえやかな声音も、名残惜しげな視線も、潤んだ眸も……―――。
ベネットを彩るそれらに、陵辱めいた気が起きない訳ではなかったが。全ての人に平等といいながら、信じぬ者にしか手を差し伸べない神と同じがごとく、それ以上のことはやはりせず。ただ、罠のように堕ちる門戸は開いたまま。]
嗚呼、それはそうだろうと。大丈夫ですよ。
それと、佳ければ彼に、なにか食べやすいものをお願いします。
[連れ立って食堂へ向かえば、見えた寮母に今朝方頼まれた薔薇の水遣りの件、つなわちフィリップのことを聞く。まだフィリップが食堂にいるのなら、一度視線を投げかけたりもしたか。
己の食事を取るついでに、紅茶を求めるだろうベネットへ先手を打ち、去り際唇の端を持ち上げると、ディーンは食堂の一角へと腰を下ろす。
薔薇園で獣じみた交わりが行われているとは識らずに。]
(354) 2010/09/05(Sun) 15時頃