……く、成る程。
此れが、あのカードに書かれた"殺意"という事か。
――なら。あれが、"もう一人のアリス"だな。
[堪え難い殺意を押し込めれば、自然と息も荒くなる。しかしぴちりと閉じた首元を寛げる気にもなれずに、唯々拳を強く握ってやり過ごそうとしてみるも――意識は未だ、白金の髪が消えた方向のまま。
だが、この殺意にそのまま従うなど、もってのほかだ。冗談ではない。
唯でさえ、あの身勝手な山羊には辟易させられているのだ。この上何故、あの忌々しい悪魔を楽しませなければならないのか――男とて、別に殺人が趣味な訳でもあるまいし。
そうは思うも、一度火の付いた殺意はそう簡単に消えてはくれずに。このまま此処にいたのならば、それこそ足が動いてしまいそうだ、とヤケクソ気味な笑みを浮かべて舌を打ち、その場から去ろうと踵を返す。]
(353) 2015/06/21(Sun) 23時頃