―雑貨屋―
[乾燥している場所が見当たらない程度に雨に塗れた格好で、可愛らしい雑貨の間を練り歩く。周囲の客の視線が痛くて、さっさとやることを済ませて帰路につこうと考える。
タオルを探す傍ら、目を惹いたのは空色のレターセット。
いつか手紙を書くと言ってくれた赤いフードの男が脳裏を過る。お互い住所もフルネームも知らないのだから、鳥にでもお願いしない限り届く筈がないだろうけれど。
更にその隣には安価だが可愛らしい花の置物。それを見て、窓際のひとりぼっちのサボテンを思い出す。
ああ、私もルーカスさんにメールを入れなければいけないんだった。
今日のお礼に、この置物をポストに入れようかな。ふ、と緩んだ頬……が、引きつった。財布の中で閑古鳥が鳴いていたから。
一時の快か、花か–––––]
これ、プレゼントで……
[差し出した花の置物は、綺麗に梱包されて手元に残った。雑貨屋を出る。
冷たい風が頬を撫でた。
雑貨屋の手前、鞄の中の安全地帯に潜めた端末を取り出して、お昼を一緒に食べ損ねた男性にメールを送ろうと……]
(352) 2014/10/06(Mon) 22時頃