――先輩? …ッ…
[ ――やがてカフェテラスの陰に、その姿を見つければ。濡れたままに任せた相手のそれに、小さく瞠目して走り寄る。
目の前に立てば雨粒に湿った髪へと手を伸ばし、許されたなら水滴を軽く払ったのだったか。
途中でタオルでも買えば良かった、と先に立たない思いを過らせては。]
…先輩ならどっちも似合うけど、体冷やすのはダメだよ。
俺が遅れたんだけど。…ごめん。――家こっち。
[ メールの文を思い出せば、緩く傾けた顔を僅かに曇らせて、低く告げる。
一度傘を持つ腕に荷物を通して。自らの透明傘を差し出しながら、一緒に入るように示した。
断られてもそのままやや強引に、空いた手でその腕を取り自らに引き寄せただろう。それに相手はどう反応したのだったか。
――やがて透明なそこに入ったなら、肩を濡らさないよう傘を傾けて、こちらに寄るように示し。自宅へと足を進ませようとしただろう。]
(345) 2014/10/06(Mon) 22時頃