―公園―
[小鳥を抱くように、コートを抱いて公園をゆっくりと歩く。
母が亡くなって暫くは、こうして母のコートを抱いて眠っていた。
灰色になるまで汚れたそれは、仕事で不在がちな父のため。
まだ幼かった自分の世話を焼くために、ともに暮らし始めた祖母の手で、捨てられてしまったけれど。]
だから鳥に―――なりたかったんだ。
[そんなことを歌うように呟けば
先ほど会話を交わした彼の姿が頭をちらついて離れない。
頭上を示された時>>292そこを覗き見ようとしなかったのは。
その後、彼が向けた苦笑いのような表情のせい。
臆病な自分が牙や狼の耳を見れば、そして怯えてしまったら。
そう考えれば動くことは出来なくて。
『信じてもいいか』の問いかけに守られた沈黙にも
それ以上踏み込むことは出来なかった――と。
自嘲めいた笑みが口元に浮かんで消え。]
(344) 2014/10/04(Sat) 17時頃