[ マフラーに半分ほど埋められていた顔が、こちらへ振り向けば>>329、斜にした視線を一間そこへと留めた。
――肩の位置もあまり変わらない背格好に、ただ君と投げてしまったけれど。年上だったかなと迷う思考はそれでも短く、立ち止まる相手へと緩く踏み出し、距離を縮めた。
相手が口を開きかけたことには気付かないまま、“忙しい?”と問えば怪訝そうな表情が返ってくる。また逡巡したような鳶色が、小さく辺りへ散らされるのをぼんやりと眺めた。
それらが己への戸惑いを示しているのだとは判断が付いたが、礼を失した突然をさして反省することもなく。敬いも繕わず続けるのを、少年はどう思ったか。]
良かった。――あー、と。……学生サン?
――ココどこか分かる?
[ 問いに否定を返されれば、薄笑いを浮かべた顔を先ほどとは反対へ、傾ける。
迷っちゃって、と付け足す声に深刻味は薄い。]
(343) 2014/10/02(Thu) 19時頃