─ 朝/ラルフの部屋>>311>>314 ─
[射し込む光の眩しさにラルフが目蓋を開いた時、部屋にディーンはいなかった。
最初に目に飛び込んでくる白は、残酷なほどの優しさに暴かれ、赦しを乞うほどに甘やかに鳴き続けた夜の果て──濡らしたタオルで身体を拭いあう所までは何とか保っていたものの、最後にラルフは立ち上がれなくなってしまい、ディーン一人に交換してもらったシーツの色。
見慣れた寝台の二段目へいたる梯子に視線を滑らせると、それでも寝台の上段に上がろうとしたラルフを、ディーンが抱きとめた事を思い出す。裸のまま1つのベッドで寝るを、厭うのか?──と問われたなら、側に居るのが怖いと答えただろう。
けれども、腕に抱かれ眠る事になったはずの寝台の上にディーンの肉体は無い。薔薇の香りに混じる、記憶に刻み込まれた彼の肉体の気配だけがラルフをまだ包み込んでいる。]
──……
[くすんだ銀灰の視線だけを巡らせると、枕元には置き手紙。
ラルフは指だけを紙片に伸ばした。見慣れた筆致で書かれたそれ。身体を気遣う言葉と、先に起きる旨とが、昨夜の出来事が夢ではない事を示す。]
(341) 2010/09/07(Tue) 14時半頃