―― いつかの部室 ――
[邪魔な髪を払って頭を撫でてくれるその手は、温かく頼もしくて。
代わりになってる……哲人のその言葉に、胸の痛みが少し癒された。
彼の手が離れてから、ゆっくりと立ち上がって。]
ううん。テツこそ、ありがと。そう言って、くれて。
……テツの辛いのも、泣いて流せたなら、嬉しい。
[いまだにひどい声しか出ないってくすっと苦笑いしながら。
さっきの幼い響きが、頭に過る。
何か言っても、この人は簡単に弱い部分は見せられないんだろう、と。
見せるとしたら、それは哲人が「ここにいる」と言ったあの人の方になんだろう、と思う。
ちょっぴり、ちりりと妬けたりもしたけれど……自分だってあの人には時に泣かされながらも憧れたりした。敵わない人。
……その人が、まだ「ここにいる」。そのことが優しく、思えた。]
(335) sakanoka 2011/05/28(Sat) 22時頃