……、ん。
[一度考え込んでしまえば、周りが見えなくなるのはこの男の悪い癖だ。それでも大きなテーブルとそこに広げられたティーセット達>>303に気付く事が出来たのは、其処から漂う奇妙な香りの所為だろう。
何かの会場らしき其処の入り口から進みすぎた数歩を戻りつつ。鼻を擽るその香りは一体何だろうかと一度息を吸ったのなら――嗚呼。やはり奇妙な香りがする。
先ずは、紅茶。それは良しとしよう、見た所広げられているのはティーセットなのだから、何の苦労も無く理解出来る。
しかし問題は、その他の香りだ。香りだけで物を完璧に選別出来るような素晴らしい鼻は持ち合わせて居ないものの、漂ってくるその香りが紅茶のものだけでない事くらいは推し量れる。
既に淹れられているのか、否か。それは此処からでは解りはしないけれど、それでもその会場の中に何やら書き物をしている人物>>305を見付けたのなら。
男は会場の門を潜り、ゆっくりとした足取りでその者の元へと向かった。]
(326) 2015/06/19(Fri) 23時頃