[――と。その時か。
目の前に居たチェシャ猫の姿が、その笑みの残滓をその場に置いたまま、忽然と消え失せてしまったのは。]
……………。
何をしているんだ、あの"チェシャ猫"は。
[消えたと思ったのは、余りにもチェシャ猫が猛ダッシュで駆けて行ってしまったから。
そしてその唐突さに、思わず寸時チェシャ猫を見失ってしまったものだから、一瞬本当に消えたのかと僅かに期待はしたのだけれど。
しかし落ち着いて辺りを見回してみたのなら、少し離れた"あの家"の近くにチェシャ猫の姿>>201は容易く見付けられる。
此処からは、その会話の全てを聞き取る事は出来なかったけれど。
それでもチェシャ猫の最初の第一声と、その後断片的に聞こえてきた言葉から、嗚呼もしかしたら……と推測するくらいは、出来たかもしれない。
そうして、再びチェシャ猫が男の元へと戻って来た時には。
その余りにも涼しげな言い振りに、男は堪らず咳き込むように吹き出しはしただろうか。]
(320) 2015/06/19(Fri) 22時半頃