—— 自宅 ——
[家に辿り着いたのは、陽が完全に暮れた頃。
女将とマスターに今日“は”手伝えないと伝えると、何を言っているのかわからないという顔をされた。ハロウィンは今日だけだ、とも。
だから男は「そうですね」と、笑みを浮かべるに留めた。
男はキッチンに吊るしたランプに火を入れる。
オイルの独特の香りが立ち、やがて室内に満たされた。
大して広くはない、家。
2人がけのテーブルと椅子が置かれた、ダイニングキッチン。
独立した寝室のベッドサイドテーブルには、ガラスの靴が置かれている。]
……あー、なにも、ないな。
[開いた冷蔵庫には水のボトルとチーズなどの軽食の類いが少々入っている以外、何も無い。きちんとした持てなしはどうにも、できそうにない。
そもそも上手い持てなし方を、男は知らない。
ただ、据え付けの食器棚からタンブラーグラスを冷凍庫に入れておくことだけは、忘れずに。]
(307) 2014/10/26(Sun) 02時頃