[慣れない喫煙でクラクラと揺れる頭を落ち着かせるのには、些か苦労させられた。少々気分も優れなかったものだから、そのまま歩き出す気にもなれずに唯々其処に座り込んでいたのだけれど。
――そんな時に聞こえたのは、聞き覚えのある羽の音>>297。
その音にハッとしたように顔を上げたのなら……その先にあったのは、矢張り。先程、空に見失った"挿絵の怪物"の姿。
その前面に見えるは、獲物を食らいつくす為の顎。その手に見えるは、獲物を引き裂く為の鉤爪。
いっそ禍々しいとすら言えるその姿に、常人ならばきっと恐れを抱くのだろうが。]
………"変な化け物"?
さぁな、少なくとも私はそんな物を宿しているつもりは無いよ。
あるとすれば……、箒で叩かれれば逃げていく、小さくか弱い"虫"くらいだ。
[男の声には、僅かな――否、明らかな高揚の色が滲む。
挿絵の化物≪ジャバウォック≫もまた、男がずっと追い求めていた物であったから……嗚呼!本当に、どうしてこれが夢の外では無いのだろう。
"卵"の問い>>298には、怪訝そうに眉を寄せつつもそう答え。男には、目の前の卵が今しがた見てきた光景など知る由も無いのだから。]
(303) 2015/06/24(Wed) 03時頃