[反射的に体が強張るが、そこはさすがパートナー。
その牙や爪はこちらに届くことなく、カエルモドキと同じく障壁に遮られる。哀れな1頭目が世界から消滅するのを見届けて、小さく溜息を。]
なるほど、カエルだけじゃねぇってわけ
[毎日の練習で固くなった指先を、弦の上に滑らせ。
余裕の笑みを浮かべている男、それからその先に存在する2頭の狼。それらを交互に見比べて、唇を舐める。]
シメオン、ちっとそいつら「貸して」くれよ
犬って、確か耳がいいんだろ?
[いうが早いか、4本の線の上を無骨な指が踊る。
求める効果は、遷延―delay―。
機器を通している訳でもないのに、奏でる音は次第に遅れ、撓み、耳の奥に起因する浮遊感を生む。
自分にとっては、耳慣れた音響効果のひとつ。
だがこの化け物たちには、どうだろうか。
安全地帯にある今のうちに、色々と試しておきたい。
頭脳が使い物にならないぶん、使える手は実践で確認していく他ないのだから。*]
(296) 2015/03/05(Thu) 22時頃